第8話 絶望を払う剣
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ハンターシリーズの防御力では、上位種のブルファンゴでも脅威になる。まして、そこから崖下に落とされたとあっては――生存は絶望的であった。
「ああ、ぁっ……アダイトぉっ……」
「姫様! くッ!」
戦闘中であるにも拘らず、両膝をついて泣き崩れるクサンテ。その姿に胸を痛めながらも、なんとか立ち直らせようとデンホルムが声を掛ける。だが、その行く手をドスファンゴの角が阻んだ。
ディフェンダーの強度でなんとか一撃を凌ぐデンホルムだったが、反撃の一撃を振るう前に猛ダッシュで距離を離されてしまう。防戦一方となり、反撃に転じることができず、巨漢は兜の奥で歯を食いしばる。
「うぅ、う……よくも――よくもおぉおぉおぉおッ!」
そして――深い悲しみを憎しみへと変化させたクサンテが、オーダーレイピアを手にドスファンゴへと向かっていく。鬼人の如き連撃の嵐が、鎌鼬のように灰色の肉体を切り刻む。
「ブモオォオォオッ!」
「あぁ……ッ!」
その痛みゆえか、ドスファンゴは両角を激しく振るい、その場で暴れ回った。その暴走の余波は、軽量なクサンテの身体をあっけなく吹き飛ばしてしまう。
クサンテは岩場に背中から叩きつけられ――短い悲鳴を上げ、倒れ伏してしまった。
「姫様ァッ! ……おのれェエェエェッ!」
その光景を前に、デンホルムは怒号を上げてディフェンダーを振り下ろす。だが、その渾身の一撃を顔面に浴びてなお――大猪は倒れない。
「ぐはぁああッ!」
間髪入れず、反撃の体当たりを巨漢に見舞う。
回避も防御も間に合わず。デンホルムの身体は、空高く舞い上げられ――轟音と共に地面に墜落した。
「ブモ、ブモォオッ!」
上位にまで登りつめたハンター二人を、容易く打ち破ったドスファンゴは、勝利の勝鬨を上げるが如く叫び出す。
――そして。気を失い、指先ひとつ動かせないデンホルムとは違い――震える両脚で、なんとか立ち上がろうとするクサンテに目を向けた。
「ブモオォオォオッ!」
やがて――とどめを刺すべく。その大猪は、突撃を敢行する。辛うじて揺らぐ視界にその光景を映したクサンテに――かわす術はない。
(アダルバート様……アダイト……ごめんなさい……。私、もう……)
自分の至らなさゆえに、命を落とすことになった二人の騎士。その魂に涙ながらの謝罪を述べながら、姫君の意識は闇に沈もうとしていた。
命を賭して守ってもらっていながら、結局は死から逃れられないところまで来てしまった。彼らの献身を、無駄にしてしまった。
その悔しさゆえの、涙だった。
――そんな、悲しみの雫が頬を伝い。
足元の芝に落ちる時。
「……まだ、眠るには早いぜ。お姫様!」
「――ッ!?」
少
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