第1話 想い人との別れ
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――遠い昔。自然と共に生きる人々の歴史の中で。モンスター、と呼ばれる巨大な生物との命のやり取りを繰り返す、ハンターという者達がいた。
ありとあらゆる武器を操り、人智を超越する存在と戦い続けてきた彼らは、己が狩ったモンスターの素材を元に、さらなる強さを手にしてきた。
彼らはその強さを以て、より強いモンスターに挑んで行く。その繰り返しは、やがて大きな歴史の渦となって行くのだった。
これは、その歴史の片隅に埋もれた、ほんの小さな物語である。
「わぁ……すっごく綺麗ですわ! ご覧になって! アダルバート様ぁ!」
「ク、クサンテ、危ないってば!」
「はっはっは。いかがですかな、この景色。なかなかのものでございましょう? 姫様」
「えぇ! さすがですわ、アーサー様!」
青空と眩い太陽に照らされた、森と丘。その豊かな自然に彩られた絶景の中を、一台の馬車が進んでいた。
その車窓から身を乗り出し、金髪を靡かせる幼い少女は、澄み渡る湖の美しさに目を奪われている。そのドアに押し付けられている黒髪の少年が渋い表情を浮かべているのに対し、同じ髪色の父は穏やかな笑みを浮かべて、少女を見守っていた。
「ハハハ! 姫様もお気に召されたのようで、大変何よりですなぁ! なにせここは、ルークルセイダー家のベストスポット! 滅多にお目にかかれない絶景が広がっているのですから!」
「ありがとうデンホルム! わたし、こんな綺麗な場所初めてっ!」
「たくもう……。振り回されてるオレの身にもなってくれよな、デンホルム」
「ガッハハハ! 何を仰いますアダルバート坊ちゃま! これぞ未来の夫としての、男冥利というものではありませぬか!」
「ふふふ、デンホルムの言うとおりだなアダルバート。姫様もお喜びなのだ、お前も楽しんでおけ」
「父上まで……ちぇー……」
馬車を引く馬の手綱を操る、スキンヘッドの大柄の男は、少女の天真爛漫な様子を想像し、豪快に笑い声を上げる。デンホルムと呼ばれたその男は、少女の返事に気を良くしたのか、口元を緩めて天を仰ぐ。
視界に広がる済んだ景色が、男の心を満たしていた。
願わくば、この平和な日々が永遠に続くように。この馬車に乗る人間全てが、そう願った時。
――そんな彼らを嘲笑うかのように、その時が訪れるのだった。
(……!?)
突如、ただならぬ気配を察知し――デンホルムはあたりを見渡す。こちらを射抜く殺気の視線は、どこからか自分達を狙っているようだった。
歴戦の騎士としての勘を働かせ、デンホルムは四周を警戒する。そして、曲がり角にたどり着く瞬間――
「なにぃいッ!?」
――白い体毛と灰色の肉体を持つ、巨大な牙獣が飛び出してくるのだった。二本の巨大な角を持つ、その牙獣は唸りを上げると
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