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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ビーター
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リーダーを失ったレイド。
レイドメンバーのほぼ全員が、己が武器を
縋
(
すが
)
るように握り締め、両眼を見開いている。だが誰も動こうとしない。リーダーが真っ先に倒れる、いや死ぬという状況が余りに想定外で、どうすべきなのか判断できていないのだ。
その時、2つの音が同時に響き、
逡巡
(
しゅんじゅん
)
するレイドメンバー達を叩いた。
1つは、最前線で、再び硬直から脱したイルファングが暴れ始めた音。金属音と悲鳴、ダメージエフェクトが塊となって薄闇を激しく揺らす。
そしてもう1つは、俺の近くに膝をついたキバオウの声だった。
「……何で……何でや……。ディアベルはん、リーダーのアンタが、何で最初に……」
ボスのLAを取ろうとしたからだ。
そう告げることは
容
(
た
)
易
(
やす
)
い。だが、俺は言わなかった。
今にして思えば、最初の会議の席上で、キバオウがディアベルに食ってかかった一幕。元ベータテスターに謝罪と不正財産の
拠出
(
きょしゅつ
)
をしてもらわねば仲間にはなれないという過激な言説を、ディアベルは
妨
(
さまた
)
げずにちゃんと議題にしようとした。
あの一幕は、自分の身を守るための行為だったのかどうかはわからないが、少なくとも自分自身が元ベータテスターだということは知られないようにしていたはずだ。
しかし、そのディアベルは死んだ。死んだ今となっては、どうでもいい話題だ。ボスを倒すという俺の意思に一切の揺らぎはない。
俺は
項
(
うな
)
垂
(
だ
)
れるキバオウに近づき、言った。
「やる気がないなら、さっさと死ね」
低い声で言うと、小さな眼にお馴染みの敵意がかすかに瞬く。
「……な……なんやと?」
「E隊のリーダーであるあんたが
腑
(
ふ
)
抜
(
ぬ
)
けてたら、お前も他の連中も、ディアベルの二の舞だぞ。いいか、センチネルはまだ追加で湧く。そいつらはお前が処理しろ」
「……な、なら、自分はどうすんねん?」
「決まってんだろ……」
右手の片手剣をガシャリと鳴らし、俺は言った。
「ボスのLAを取りに行くんだよ」
この世界に囚われてから1ヶ月、俺は自分1人の命を繋げるためにあらゆる行動を選択してきた。ベータテスト時代に得た膨大な知識を誰にも分け与えず、高効率な狩り場やクエストを1人で受け、ひたすら己だけを強化し続けてきた。
ソロプレイヤー……いや、俺自身としての行動規範を貫くなら、まだボスモンスターと俺の間に多くのレイドメンバーが立っている今の内、出口に向かってひたすら走るべきだ。荒れ狂うコボルド王が仲間を何人殺そうとも振り向かず、むしろ積極的に彼らを盾にして、自分の安全だけを確保する。
ボスを倒せ。
騎士
(
ナイト
)
ディアベルはそう言おうとしたのだ。皆を逃がせ、ではなく。レア
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