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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ビーター
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知らない素人ばかりだった。今のお前らのほうがまだマシだ」

声は至って穏やかだが、どこか恐怖染みたものを感じさせる言葉に、42人のプレイヤー達が一斉に黙り込む。まるでボス戦前の緊張感が戻ってきたかのような冷たさが、眼に見えない刃となって肌を撫でる。

「……だが、俺は違う。俺はベータテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスの刀スキルを知っていたのは、ずっと上の層で刀を使うMobと散々戦ったからだ。このゲームの知識に関しては俺のほうが、攻略本を配布したアルゴ以上に詳しい」

「……なんや、それ……」

最初に俺を元テスターと指摘したキバオウが、掠れ声で言った。

「そんなん……もうベータテスターどころやないやんか……もうチートや、チーターやろ!」

周囲から、そうだ、チーターだ、ベータのチーターだ、という声がいくつも湧き上がる。それらはやがて混じり合い、《ビーター》という奇妙な響きが単語が俺の耳に届く。

「……《ビーター》……か」

俺はその場の全員をグルリと見回しながら、感情を押し殺した声でハッキリと言った。

「《ビーター》か……悪くないネーミングだな。これからは、俺を他の元テスター如きと一緒にするな。そう思われるだけで気分が悪くなる」

__これでいい。

これで、現在4〜500人ほどいると思われる元ベータテスターは、《素人上がりの単なるテスター》と、ほんの少しの《情報を独占する汚いビーター》という2つの種類に分かれた。

今後、新規プレイヤーの敵意は、すべてビーターに向けられるだろう。仮に元テスターだと露見しても、すぐに目の敵にされることはない。俺1人を除いて__。

しかし、俺が自ら望んでやった行為だ。悔いはない。

俺の目的も他のプレイヤー達と同様、この世界からの脱出。だが、俺の目指すゴールはもっと高みにある。ゲーム世界からの脱出など、目的の半分でしかない。そのゴールを目指すために、余計な思想は捨てるべきだ。余計な人間が付いてくるのも迷惑だ。

今までの過去も、これからの未来も、ずっと独りのつもりだ。今回も同じ。誰とも関わりを持たない。そして誰かとパーティーを組む気もない。どこかのギルドに入る気も毛頭ない。

蒼白な顔で黙り込むレイドメンバー達から視線を外し、俺はメニューウィンドウを開くと、装備フィギュアに指を走らせた。

今まで装備していたハーフコートの代わりに、ついさっきボスからドロップしたばかりのアイテム、《コート・オブ・ミットナイト》を設定する。すると、俺の体を小さな光が包み、くたびれた灰色の生地が、(つや)のあるダークブルーの革へと変化した。丈も随分と伸び、(すそ)が膝下まで達している。

そのロングコートの襟首に付いたフードを頭にバサリと被り、俺
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