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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
第1層ボス攻略会議
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タテスターだ。

今年の夏休みに行われたSAOクローズド・ベータテストは、募集枠わずか1000人だった。その全員に正規版パッケージの優先購入権が与えられたのだが、テスト末期のログイン状況を見るに、1000人がこぞって正式サービスに移行したわけではないと推測される。おそらく、700人から800人。それがデスゲーム開始時点での元ベータテスターの総数だろう。

しかし、《誰が元ベータテスターか》を調べるのはそう簡単なことではない。カラー・カーソルに【β】マークでもあれば話は速かったがもちろん……と言うか幸いと言うかそんなものは存在しないし、アバターの外見は、GMたる茅場(かやば)晶彦(あきひこ)の配慮によって現実の容疑そのままに戻されてしまっている。唯一の手掛かりとなり得るのは名前くらいだが、テストと本番でキャラネームを変更している可能性もある。

知識と経験が常に安全を生むわけでもない。逆に陥穽(かんせい)となることもある。

「発言、いいか」

その時、豊かな張りのあるバリトンが、夕暮れの広場に響き渡った。顔を上げると、人垣(ひとがき)の左端辺りからぬうっと進み出るシルエットがあった。

身長は190ほどある大柄の男。背中に無骨な両手用戦斧を吊っている。

風貌(ふうぼう)もまた、武器に負けず劣らず魁偉(かいい)だった。頭を完全なスキンヘッドにし、肌はチョコレート色。しかし、()りの深い顔立ちに、その思い切ったカスタマイズが実に似合っている。

噴水の傍まで進み出た筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)たる巨漢は、数人のプレイヤーに軽く頭を下げると、猛烈な身長差のあるキバオウに向き直った。

「俺の名前は《エギル》だ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。だから、その責任を取って謝罪・賠償しろ、ということなんだな」

「そ、そうや」

キバオウは一瞬、()()されたように片足を引きかけた。

エギルという斧使いが見事なバリトンで続けた。

「キバオウさん、金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ」

斧戦士がはち切れんばかりの筋肉を覆うレザーアーマーの腰に付けた大型ポーチから、羊皮紙を()じた簡易(かんい)な本アイテムを取り出す。表紙には、丸い耳と左右3本ずつの(ひげ)を図案化した《(ねずみ)マーク》。

「このガイドブック、あんただって貰っただろ。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布してるんだからな」

「……あれは……」

俺は思わず小声を漏らす。あれは、表紙マークの示すとおり、情報屋《アルゴ》が販売していた《エリア別攻略本》だ。詳細な地形から出現モンスター、ドロップアイテム、クエスト解説まで(もう)
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