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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十三話 誰がための忠誠
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で敵を待ち受けることとしよう」
わしが声を上げると、リッテンハイム侯が真っ先に賛意を表した。後は簡単だった、皆我先にと賛成した……。


帝国暦 487年 12月 3日  ローエングラム艦隊旗艦 ブリュンヒルト  ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ


先程ジークフリード・キルヒアイス准将からブリュンヒルトに極秘の通信が入ってきた。それによればヴァレンシュタイン司令長官が新無憂宮のバラ園で刺客に襲われたのだという。

重傷、生死定かならず、その報告にブリュンヒルトは緊張に包まれた。皆重苦しい沈黙を保っている。そんな中オーベルシュタイン准将だけが意見を述べ始めた。

「閣下、艦隊は進軍を止め一旦様子を見るべきです」
「オーベルシュタイン……」
「ヴァレンシュタイン司令長官は生死不明の重態です。場合によってはオーディンで混乱が生じるかもしれません。様子が分かるまで出来るだけオーディンの近くに居るべきだと思います」

ローエングラム伯は迷っている。微かに俯き考え込んでいる。おそらく先日の暗殺騒ぎの事が頭にあるに違いない。あの時の自分の行動が軍上層部に否定的に見られた事がローエングラム伯を躊躇させている。

迷う事は無いのだ。軍務尚書エーレンベルク元帥に連絡を取りヴァレンシュタイン元帥の安否の確認、作戦の続行、変更の有無の確認、今後の宇宙艦隊の統括を誰がするのかを確認すれば良い。

もしかすると宇宙艦隊の統括をメルカッツ副司令長官に取られるとでも思っているのかもしれない。だったら統括そのものはエーレンベルク元帥に預けてもいいのだ。むしろその方が変な誤解を受けずに済む。

それにしてもオーベルシュタイン准将、彼は明らかにおかしい。一見筋道を立てているように見えながら、どう見てもローエングラム伯を危険な方向に押しやろうとしているように見える。今此処で立ち止まるなど敵味方双方から不審を買うだろう。

「閣下、オーディンで混乱が生じれば場合によってはグリューネワルト伯爵夫人にも危害が及びかねません。それでよろしいのですか?」
「姉上か、そうだな、やはり此処で立ち止まるべきか……」

唖然とする思いだった。信じられない! 一体何を考えているのか。伯爵夫人が心配だから様子を見るなど誰が信じるだろう。自分の立場がまるで分かっていない。先日の失態をどう思っているのか……。皆がローエングラム伯は混乱に乗じて兵権を握ろうとしたと考えているのに……。

溜息が出る思いだった。これでは誰も付いてこない。余りにも不安定すぎる、誰も自分の未来を預けられないだろう。提督達がヴァレンシュタイン司令長官を頼り、メルカッツ副司令長官を信頼するのは当たり前だ。

「閣下、それはお止めください。余りにも危険すぎます」
我慢できずに声を出してい
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