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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十三話 誰がための忠誠
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二人を取り返してきたからだと思っているらしい。

娘達はもうフェルナーが取り返した。こいつらに気を使う必要は何処にも無い。思いっきり吐き捨てた。
「一言か、ならば言ってやる、余計な事をしてくれたな」
「な、なんと」
馬鹿どもの唖然とした表情がいっそ心地よかった。

「卿らが娘達を攫ったせいでフェルナー達は、止むを得ず行動に出ざるを得なかった。おかげでヴァレンシュタインの暗殺は失敗した。本来ならもっと確実な方法であの男を殺せたのにな」
「……」

「おかげで我等は諸侯を騙す事になってしまった。全く余計な事をしてくれたものだ」
わしに続けてリッテンハイム侯が不機嫌な表情で吐き捨てた。小僧どもの表情が蒼白になっている。自分達の所為で暗殺が失敗したと言われたのが応えたらしい。笑止な事だ。

「で、ですが御息女が人質では……」
「愚かな、娘は陛下の孫なのだぞ。我等が反逆を起したからといって簡単に殺せるとでも言うのか、浅慮にも程があるな。第一我等の妻が処刑されたか?」

「……」
「他に欲しい言葉があるか。無ければこれから軍議なのだ、出て行ってくれ」

連中が出て行くとリッテンハイム侯が呆れたような声を出した。
「娘を誘拐し、我等を脅し、その上で褒めて欲しいとは、よくもまあ己に都合よく考えられたものだ」

「全くだな、卿の言う通り昨日のうちに総司令官をグライフスに決めておいて正解だな」
「うむ」

溜息が出た。気がつけば男二人、ともに溜息をついている。
「そろそろ軍議に行くとするか」
「うむ、そうするか」



軍議と言っても大した物ではない。大勢の貴族の前でグライフスが軍の基本方針を述べるだけだ。元々政府軍の動きは大体分かっている。本隊と別働隊に分かれて反乱を鎮圧すると言うものだ。

当然グライフスもそれを前提に作戦を立てている。事前に作戦案を聞いているが大体のところは問題無いだろう。後はシュターデンあたりが何か言ってくるかもしれんが、どうするかはそのとき次第だ。

大広間には大勢の貴族、軍人達が集まっていた。此処は声が良く通るが、一番後ろには声が届くまい。もっとも前方を占めている主だった者が納得すれば他のものは追随するだけだ。グライフスは緊張しているのだろう。少し顔を紅潮させている。

「先ず、敵の現状だが敵は三手に分かれている。一隊はシュムーデ提督率いる四個艦隊。現在アルテナ星系を過ぎヨーツンハイムへ向かっている。おそらくはフェザーン、オーディン間の航路の確保が目的だと思われる」
「……」
少し声が上ずっている。大丈夫だろうか?

「次の一隊はローエングラム伯率いる六個艦隊、カストロプ方面に向かっている事から、おそらくはマールバッハ、アルテナ、ヨーツンハイムを通って辺境方面を攻略する
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