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ドリトル先生の名監督
第七幕その三

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「お洒落だと思うよ」
「イギリスの方から見てですか」
「そうなんですか」
「そう、あれはお洒落だよ」
 褌はというのです。
「どうも僕はお洒落には縁がないからね」
「いつもスーツですけれど」
「それも清潔でしっかりとした」
「それでもですか」
「お洒落にはですか」
「意識したことはないよ」
 スーツと帽子のいつもの服、お家の中のどてらや作務衣の時もというのです。
「ちゃんとした身なりは意識してるけれどね」
「礼儀正しくですね」
「そうしたお考えから」
「うん、だからスーツだけれど」
 いつもそうした服である理由はというのです。
「けれどお洒落はね」
「縁がない」
「そういうことですか」
「そうだよ、僕はね」
 どうにもというのです。
「お洒落には縁がないよ」
「正装とお洒落は別」
「そういうことですね」
「そう思ってるよ、どうもお洒落は柄じゃないから」
 だからとです、またお話する先生でした。
「褌もなんだ」
「褌もお洒落と思われてるから」
「それは穿かれないですか」
「そうなんですね」
「日本の服はとてもお洒落だね」
 またこう言った先生でした。
「着物も履きものもね」
「どれもですか」
「お洒落ですか」
「時代劇なんか観たらうっとりするよ」
 あまりにもお洒落だからというのです。
「歌舞伎もね」
「歌舞伎の服もですか」
「そちらもお洒落ですか」
「日本の着物は」
「江戸歌舞伎の助六になると」
 この人はといいますと。
「あんな格好いい人はいないね」
「ええと、あの黒の着流しで」
「紫の鉢巻に蛇の目傘に高下駄に赤褌」
「あの格好がですか」
「あれは最高だよ、あんなお洒落な人はそうそういないよ」
 先生は学生さん達に笑顔でお話します。
「あの助六の褌を見てるとね」
「その赤い褌ですか」
「それがあまりにもお洒落で」
「だからですか」
「先生はそう思われてるんですね」
「僕には褌自体が無理だよ」 
 それこそというのです。
「もうね」
「僕達も穿いてないですけれど」
「今は大抵トランクスかボクサーで」
「ブリーフも殆どないですね」
「どちらかですね」
 トランクスかボクサーパンツかというのです。
「ですが褌はお洒落」
「他の国の人から見ればですか」
「そうでもあるんですね」
「そうだったんですね」
「僕は作務衣もお洒落だと思うよ」 
 お家の中で着ているそれもというのです。
「あれもね」
「作務衣もですか」
「あれも」
「うん、いい作業服だね」
 そのデザインもというのだ。
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