暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百十七話
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
キは最も離れていた場所にいた俺に、思いっきり手に持っていた記録結晶を投げつけた。ギリギリ届くか届かないかぐらいの距離に落下し、何とか地面に落ちる前にキャッチしてみせた。

「じゃ、よろしく!」

 同じ場所にいたリズは、こちらの肩を叩いてさっさと黒鉄宮の方に行ってしまう。癖で髪の毛をガリガリと掻いた後、とりあえずストレージから記録結晶を固定する台を出しておく。

「ねぇショウキくん。頼んでおいてなんだけど、なんでそんなの持ってるの……?」

「レプラコーンだからな」

 記録結晶などと大仰な名前ではあるものの、要するに機能は現実のカメラと同じだ。タイマー機能もあるため、撮影者だけ入れないなんてことはない。試しに記録結晶を黒鉄宮に向けてみると――

「……全然入ってない」

「みんな! もっとギューッと!」

 セブンの号令の下、黒鉄宮の前で整列していたプレイヤーたちがさらに密着し、何とか記録結晶の枠内に入った。ただし盛大におしくら饅頭状態であり、ユウキたちの名前が刻まれた碑どころか、背後の黒鉄宮すら見えない状態だったが。

「ちょっとお前見えねぇって!」

「中腰? 中腰になればいいのか?」

「ちょっと、誰か触りませんでした!?」

「ほらアスナ、なんであんた端っこにいんの!」

「俺のペットが写らないんだけど……」

「喧嘩しなーい!」

 そして当然ながら、各所からざわざわと騒動が巻き起こっていく。それぞれのリーダー格が仲裁に入ってはいるものの、このままではまた雪崩のように倒れるのは時間の問題だろう。それどころか、女性プレイヤーへのハラスメント警告が発生する可能性まである――当の牢獄は、その真後ろではあるが。

「撮るぞ!」

 リズが無理やりアスナを真ん中に押してみせて、ユウキとセンターに位置した瞬間、とりあえず記録結晶の枠内に完全に収まった。宣言をしてからタイマー機能を起動し、用意してあった記録結晶用の台に載せた。

「みんな、このまま維持だヨ!」

「ショウキ、ほら早く早く!」

「分かってるって……ん?」

 リズからの催促を受けて、もはや組体操でもやっているのかと言わんばかりの、黒鉄宮を前にするプレイヤーの集団に接近する。しかし、そこで違和感に気づいてしまう――この記念撮影において、重大な欠陥となるその要素に。

「もう限界まで詰め詰めなのに、俺はどこに入ればいいんだ……?」

「え」

「あ」

 カメラマンとして記録結晶を見ていた者として、俺はそのことに気づいてしまう。もはや一つの物体となっているこの集団に、もはや俺の居場所などないのだ――などとシリアスに言っている場合ではないが、俺が入り込めるスペースがないのも事実だった。

「ちょ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ