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SAO−銀ノ月−
第百十七話
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太刀の状況を改めて確認する。真新しい傷は目立つが、刀身に歪みはなく古い傷跡は見当たらない……どうやら、大事に使ってくれているようで、自然と顔がほころんでいた。

 対するスメラギはいつもの仏頂面だったものの、俺の手の中で傷を癒していく野太刀を見ながら、静かに口を開いていた。

「セブンの件。お前たちがいなければ、この未来はなかった……ありがとう」

 スメラギの視線の先を追うと、二人きりで話すセブンとレインの『姉妹』の姿が見受けられる。最初はセブンが『自慢のお姉ちゃんをシャムロックのみんなに紹介して回る!』などといってレインを真っ青にしていたが、何とかひとまずは二人でゆっくり話すことに落ち着いたようだ。もう数十年と会っていなかった、というのがまるで嘘のように、二十年来の友人のように語り合っていた。

「お礼はどうも。でも、これからどうするんだ? シャムロック」

 結成されたシャムロックはいわば、セブンがこの世界での実験を成功させるためのチームだ。その実験はユウキにフロアボスの攻略を譲ったことでほぼ失敗し、何より、もう姉を見つけたセブンに実験をやる必要はないし、する必要もない。

 ならば、このシャムロックというギルドは、これからどうなってしまうのだろう。気になっていたことをスメラギに問いかけると、スメラギはその仏頂面を崩さないままに返答する。 

「このままだ。セブン……七色が違う仕事にも従事することになるから、規模は縮小するだろうが」

「…………」

 そういえば、セブンはこのALOには『実験』という体で来ていたため、実験が頓挫した今はまた別の仕事が待っているのだろう。そうなればアイドルの仕事も含めて、ログイン出来る頻度は当然下がるだけでなく、実験の頓挫の責任――などといった話にまで、繋がることもあるのだろうか。もちろんそんな事態に対しては、俺は門外漢だが……

「手が止まっているぞ。……大丈夫だ。そういう後始末が俺の仕事だからな」

 そんなこちらの心配そうな視線が伝わったのか、スメラギはこちらの動きを注意しながら、そんなことを呟いていた。慌てて手を動かすものの、もはや野太刀のメンテナンスはほとんど終わっていた。最後の仕上げをしていくと、スメラギから代金が支払われた。

「……俺個人としてもだが。二回も負けたまま引退してはられん」

「はいお待ち……お手柔らかにな」

「そこは『いつでも受けて立つ!』でしょー?」

 今のところはこちらの二戦二勝の戦いに、スメラギはリベンジを誓うようにニヤリと笑う。もちろん、セブンたちが引退するようなことにならないのは嬉しいが、出来ればわざわざ戦いたくはない。そう思いながらメンテナンスの終わった野太刀を渡すと、隣のリズからヤジが飛んできたのを無視する。


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