第四章
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「急にこうなったのは」
「私達だけかしら」
「病気か、これ」
「こんな病気あるの?」
「どうだろうな、ちょっと調べてみるか」
こう言ってだ、ヘラクレスは。
自分のスマートフォンを出してネットにつないで検索した、すると。
「ギリシア中大騒ぎになってるな」
「私達みたいになってるのね」
「ああ、皆な」
それこそというのだ。
「目とか耳とか口が顔から出てな」
「飛ぶのね」
「そうなってるな」
「ギリシアだけ?」
「そうみたいだな」
「どうして我が国だけなのかしら」
「さてな、とにかくこのことで大騒ぎになってるぞ」
ネットの記事を見るとそう書いてあった。
「それも世界的なな」
「もう世界に話が広まってるの」
「何でも昼過ぎから急にそうなったらしいからな」
つまり二人が寝ている間にだ。
「それでな」
「そうなのね」
「ああ、ギリシア人だけなってるな」
「ギリシアにいる」
「観光客にはなってないな」
「ギリシア人だけの奇病なのね」
「みたいだな、まあとにかくな」
ヘラクレスはここでだ、自分の耳を飛ばしてみた。そして宙をふわふわとさせながらそのうえで妻に話した。
「別に他におかしくもないし」
「これ自体が凄くおかしいけれどね」
「気にしないでおくか」
「そうね」
「じゃあ晩飯食って」
「お風呂に入って」
「寝るか」
実に気楽にだ、こう言ってだった。
夫婦はその後は普通にバカンスに入った。これは多くのギリシア人が同じだった。別に身体の調子が悪くなる訳でもギリシア経済が急に好転するか借金が全くなくなる訳でもないので特に気にしなかったのだ。ドイツ人が言うには後の二つは最初から気にしているのか、になるかも知れないが。
しかし世界は違ってだ、ギリシアのギリシア人達のこの異変にだ。
大騒ぎになってだ、とてつもない議論になっていた。
「何でそうなる!?」
「目や耳や口が飛び出るって何だ」
「またギリシアか」
「ギリシア人は何があるんだ」
「というか働け」
「借金何とかしろ」
関係ないことまで言われる始末だった、そして。
世界から観光客達が殺到した、勿論医師達も。
それでその異変を観て調べた、しかし原因はわからず。
彼等にはそうした異変は起こらずだ、首を傾げさせて話した。
「ウィルスも身体的な異変もない」
「しかもギリシア人以外にはならない」
「空気にも異変はない」
「どうなってるんだ」
「異様な話だな」
「こんな話はなかった」
これまでの人類の歴史でもというのだ。
「鼻が自然に歩く歌劇はあったがな」
「確かロシアにな」
「けれどこんな話はなかったぞ」
「目とか口とかが勝手に出るとかな」
「それでその間顔がのっぺらぼうになるとか」
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