第二章
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「あなたの言葉私お風呂場から聞こえるから」
「御前ベッドルームにいるだろ」
「けれどお風呂場からよ」
家のそこからだというのだ。
「聞こえるわよ」
「どうなってるんだ?」
「さて、どうなってるのかしら」
「変な話だな、しかしな」
「しかしって?」
「動くぞ」
こうもだ、ヘラクレスはキッチンの中を見回して風呂場で話を聞いているという妻に対して。声は寝室からだが。
「視界がな」
「歩いてるみたいに?」
「ふわふわした感じだけれどな」
それでもというのだ。
「動くぞ」
「そうなの」
「ああ、ちょっとそっちまで行くな」
「寝室に」
「今からな」
「あれっ、私もよ」
ヘレナも言って来た。
「聞こえる場所がね」
「変わるか?」
「お風呂場の中でもね」
「そうなのか」
「何か自然に」
「どうなってるんだ」
「とにかくね」
「ああ、寝室にな」
「行こうな」
二人で話してだ、それぞれ視界と聴覚を寝室に戻した。どうにも調子が穏やかでないところもあったがだ。
それでヘラクレスは視界を寝室に戻した、すると。
自分と妻がベッドに寝ていた、自分は目を閉じて寝ていて妻は身体を半分起こしてベッドの中にいる。その様子を見てだ。
何故かと思ったが妻は自分を見て血相を変えて言って来た。
「目!?」
「目?」
「そう、目よ」
こう言って来たのだ。
「あなた目が飛び出てるわよ」
「飛び出てる?」
「そうよ、見ればわかるわ」
こう言って来たのだった。
「これがね」
「一体何を言ってるんだ」
「だから目が」
「!?何だ?」
妻の言っていることがわからなかったがだ、ここで。
彼はその視界にもう一つのものを見た、それは。
耳だった、二つの耳が彼の前を飛んでいた。彼はそれを見て言った。
「耳?何だ?」
「今度は耳?」
「何で耳が飛んでるんだ」
ヘラクレスは声で首を傾げさせた。
「しかも俺も起きてきたぞ」
「そうね」
「おい、俺の耳はあるな」
起きた自分の耳はあった、だが開いた目は。
そこには目がなかった、がらんどうだった。
しかし耳があったのでだ、こう妻に言った。
「耳あるか?」
「あれっ」
ヘレナは夫の言葉を受けて自分の耳がある場所を摩ってだ、夫に答えた。
「ないわ」
「じゃあその耳はな」
「私の耳?」
「そうなのか?」
「そうみたいね」
「これはどういうことなんだ」
「ひょっとして」
妻はベッドの中で首を傾げさせて言った。
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