第一章
[2]次話
動けること
出雲亮太は運動が大嫌いです、それでです。
いつもです、家でも幼稚園でもこう言っていました。
「かけっこしたくないよ」
「あら、またそう言うの」
「だって走るの嫌いだから」
お母さんにも先生にも言うのでした。
「かけっこしたくないよ」
「そう言ってもね」
「歩くだけでもいいよね」
「人は走らないといけない時もあるのよ」
お母さんも先生もこう亮太に言います。
「だからね」
「走らないと駄目なの?」
「そう、今はね」
「僕走るの嫌いだよ」
けれどいつもこう言う亮太でした。
「だって疲れるから」
「走るとなの」
「歩いていても疲れるのに」
走ると、というのです。
「余計に疲れるから」
「だからなの」
「そう、走りたくないよ」
「困った子ね」
お母さんも先生もそんな亮太に困るばかりです、そして。
亮太はいつもかけっことか他の運動をする時はとても嫌そうにしました、ですがある日でした。
亮太はお父さん、お母さんと一緒にです、スーパーで買いものに来ました。そこでお母さんはこう亮太に言いました。
「今日はカレーライスよ」
「僕の大好きな」
「そう、だからね」
それでというのです。
「楽しみにしていてね」
「僕カレーライス大好きだよ」
笑顔で言った亮太でした。
「とてもね」
「今日のカレーはとても甘いから」
「甘いカレーだね」
「そう、亮太は甘いカレーが好きよね」
「カレーの中でもね」
亮太が大好きなカレーライスの中でもというのです。
「一番好きだよ」
「そうよね、だからね」
「甘いカレーライスだね」
「それを作るからね」
「亮太、いいかい?」
今度はお父さんが亮太に言います。
「ここは広くて沢山の人がいるから」
「うん、お父さんとお母さんから離れない」
「そう、絶対にね」
こう優しい声で言うのでした。
「お父さんとお母さんから離れないんだ」
「お父さんかお母さんの手をいつもね」
お母さんがまた亮太に言います。
「持っていてね」
「うん、そうするよ」
「それじゃあね」
亮太はお父さんとお母さんに言われてでした、実際にです。
両手でそれぞれ二人を持ってでした、離れませんでした。そうしてスーパーの中で家族で買いものをしていますと。
亮太はふとです、車椅子に乗ったお婆さんを見ました。それで、でした。
お父さんとお母さんにです、こう尋ねました。
「ねえ、お父さんお母さん」
「どうしたんだい?」
「何かあったの?」
「あの人歩いていないよね」
そのおばあさんを指差して聞きます。
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