第五章
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「自分でも驚く位にね」
「じゃあ今から御飯食べなさい」
母は今は優しい声で息子に言った。
「お父さんもね」
「母さんジャムはあるか?」
パンに着けるそれはとだ、自分の妻に尋ねた。
「苺ジャムは」
「そこの辺りにあるでしょ」
「じゃあ探すね」
「そうしてね、それと由利香もそろそろ起きて来るから」
こちらは普通に起きてくるので問題はない。
「皆で食べましょう」
「うん、それじゃあね」
剣は自分の席に着いた、そしてだった。
彼はこの日からすぐに起きられる様になった、これまでの様に起きるまで大騒動になることはなかった。それでだ。
由利香はある日家の中で母と二人だけになった時にだ、こう言った。
「お兄ちゃんの目覚まし成功だったわね」
「そうね、あれでね」
「お兄ちゃん起きる様になったわね」
「朝ちゃんとね」
「やっぱり工夫次第でなのよ」
「変わるのね」
「そうなのよ」
実際にというのだ。
「これがね」
「あの子にしてもなのね」
「私もあそこまで上手くいくとは思っていなかったわ」
「落語があそこまで効くとは」
「ええ、けれどね」
「あの子すぐに起きられる様になったから」
それでとだ、母は言う。
「お母さんは助かってるわ」
「そうなのね」
「最高よ、じゃあこのままいきましょう」
「お兄ちゃんの朝の目覚ましは落語ね」
「それでいくわ」
「それでいいと思うわ、工夫一つでね」
「大きく変わるわね」
実際にというのだ。
「有り難いことに」
「有り難いのね」
「馬鹿息子への苦労が減ったのよ」
ここでも息子をこう呼ぶ。
「それならよ」
「有り難いのね」
「そうよ」
実にというのだ。
「こんないいことはないわ、じゃあこれからもよ」
「お兄ちゃんの目覚ましは落語」
「これでいくわ」
こう笑顔で言ってだ、実際に剣の目覚ましは一つだけそれも彼が好きな落語になった。すると剣はすぐに起きる様になった。毎朝の騒動は意外な形で幕を降ろした。
朝の騒動 完
2016・5・24
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