第四章
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「やってみて後悔する方がいいじゃない」
「やらないで後悔するよりっていうのね」
「そっちの方がずっとね」
だからこそというのだ。
「そうしましょう」
「わかったわ、それじゃあね」
「動くわよね」
「そうするわ」
母は娘に答えた、そしてだった。
実際に剣の目覚ましをまずは全部家のそれぞれの場所に置いた、時計は幾つあってもいいのでそうしたのだ。現代文明の中で生きるにあたって時間のチェックは常にしないといけないのは家の中でも同じだ。
そして家のラジカセを剣の家に置いてだ、タイマーを彼が起きる時間にセットしてCDを入れてから息子に言った。
「これからあんたの目覚ましはラジカセよ」
「変えるんだ」
「そうよ」
その通りという返事だった。
「変えたから」
「何でまた」
「朝になればわかるわ」
ここではあえて多くを語らなかった。
「その時にね」
「そうなんだ」
「そう、わかったらラジカセはいじらないことよ」
「タイマーとかは」
「そうしなさい、いいわね」
「わかったよ、とにかくだね」
「目覚ましはラジカセだけにするから」
これまでの一ダースの時計ではなくというのだ。
「いいわね」
「わからないけれどわかったよ」
母の意図はわからないが目覚まし時計のこと自体はというのだ。
「それじゃあね」
「そういうことでね」
こうしてだった、剣の目覚ましはラジカセ一つになった。そしてその次の日の朝だった。
剣は時間になるとすぐにリビングに出て来た、その彼を見て出勤の用意をしていた父は目を丸くさせて言った。
「これは珍しいな」
「いや、すぐに起きられたよ」
剣は寝ぼけている顔だが起きてきて父に答えた。
「今日はね」
「御前お父さんより寝起きが悪いのに」
それも相当にだ。
「それでもか」
「あんな目覚ましもあるんだね」
「成功ね」
キッチンの中で母が会心の笑みを浮かべていた、ハムエッグを焼きながら。
「よかったわ」
「あれだとね」
剣は母に顔を向けて言った。
「起きるよ」
「そうよね」
「本当にね」
「やり方次第ってことね」
こうも言った母だった。
「人の起こし方も」
「飛び起きたよ」
その目覚ましの音を聴いてというのだ。
「あれでね」
「あんたの好きな落語だからね」
「すぐに起きたよ」
中々出ない布団からだ、出られたというのだ。
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