第二章
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その彼のことはクラスでも有名でだ、クラスメイト達は彼に笑って言っていた。
「御前修学旅行大丈夫か?」
「朝ちゃんと起きるか?」
「去年の部活の合宿目覚まし十個持ってきてたらしいな」
「それでも起きなかったよな、中々」
「今じゃ目出度く十二個だよ」
一ダース達成したとだ、剣はクラスでも悪びれずに言う。態度は悪びれないがそれでも制服の黒のブレザーの着こなしは真面目だ。
「いやあ、増えたよ」
「それでも起きないのかよ」
「十二個の目覚ましの音でも」
「それも凄いな」
「ある意味な」
「起きられないから仕方ないじゃない」
クラスでも本当に態度が変わらない。
「それもね」
「じゃあ修学旅行でもか」
「今回のそれもか」
「起きられない」
「そう言うんだな」
「寝起きは悪いから」
仕方ないという口調だった。
「もうそういうことで」
「十二個の目覚ましか」
「それでいくか」
「そうするか」
「起きるんだな」
「ああ、そうなるね」
何処か他人事の剣だった、周りもそんな彼を見て覚悟していた。
「こいつと同じ部屋になったら諦めるか」
「起きられないともう放っておくか」
「こいつ本当にどれだけ起きないんだ」
「洒落になってない寝起きの悪さだな」
誰もが呆れていたがだ、それでもだった。
とにかく剣は朝起きない、起こすにはかなりの苦労が必要だった。それで家族も困っていたが。
母にだ、娘であり剣の妹である由利香がこんなことを言った。中学生でのどかなやや垂れ目の蒲鉾型の目をしている、眉は薄く奇麗なかたちをしていて茶色に脱色した髪を短くしている。唇は奇麗なピンクで鼻の形もいい。背は普通位だが胸は中学生とは思えない位ありスタイル全体がいい。母にしてもよく育ったと思っている。
その由利香がだ、母に言った。
「ちょっと考えたけれど」
「お兄ちゃんのことで?」
「隣の部屋で毎晩五月蝿いのよ」
その一ダースの目覚ましの音がというのだ。
「だからせめて一つにして欲しいけれど」
「一つで起きる子じゃないでしょ」
はっきりとだ、母は娘に言った。
「お兄ちゃんは」
「それで私も考えたの」
「すぐに起こす方法ね」
「そう、簡単にね」
「それどんな方法なの?」
「お兄ちゃん落語好きでしょ」
兄の趣味から言うのだった。
「だからね」
「朝の目覚ましになのね」
「目覚まし時計じゃなくて」
「落語ね」
「それで起こしてみたら?」
「何処かの元総理みたいね」
宇宙人だのルーピーだの言われている輩だ、最初は人気があったがすぐに化けの皮が剥がれてしまった。もっともそうなるまでもそれからも総理に選んだ国民の払った代償は大きかったが。選挙はテレビや新聞だけを鵜呑みにすると馬鹿を見るということ
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