第五章
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「聞いたことないな」
「本で書いてあったらしいが」
「本当かな」
「どうかな」
「いや、あるよ」
暢樹だけはこう言う、自ら先頭に立って作業をしながら。
「絶対に」
「あります?」
「何か不安ですけれど」
「あの、若しなかったら」
「その時は」
「その時は仕方ない」
はっきりとした返事だった。
「もうそれで納得するしかない」
「そうきますか」
「その時は引き返す」
「それですね」
「ないなら仕方ない」
流石に暢樹もその時はこう思っていた。
「東郷ターンだ」
「いや、それ戦うターンですよ」
「それで日本海軍勝ってますよ」
日本海海戦においてだ、しかも圧勝だった。
「そういえば東郷さんこっちの生まれでしたね」
「あの人鹿児島でしたね」
「だから東郷ターンですか」
「それで言ったんですか」
「そうだ、しかし東郷ターンをしてだ」
そのうえでというのだ。
「帰るぞ」
「それって勝って帰るってことじゃ」
「絶対に見付けてるとしか聞こえないですよ」
「その意気でいくんだ」
何といってもというのだ。
「何としても見付けるぞ」
「わかりました、じゃあ徹底的にですね」
「探すんですね」
「発掘作業しますか」
「そうするぞ、時間までな」
こう言ってだ、そしてだった。
暢樹は自ら発掘作業を続けた、多くの者はまさか見付かるとは思っていなかった。鹿児島で古墳なぞと思ってだ。
だが、だ。何と。
まずは石像が出て来た、これには暢樹以外の全ての者が驚いた。
「おい、石像だぞ」
「九州の遺跡じゃないか」
近畿は土偶、埴輪等のそれが多いが九州はこちらなのだ。
「これが出て来たということは」
「まさか」
「ああ、間違いない」
にやりと笑ってだ、暢樹は自分の服の袖で額の汗を拭いつつ言った。
「ここにあるぞ」
「古墳がですか」
「それが」
「ああ、じゃあどんどん掘るぞ」
こう言って自らブルドーザーの様に掘った、するとだった。
他の石像に奈良県や大阪府にある様な古墳が出た、それを見て周りの者、現地から来た者達も言った。
「これは」
「近畿の古墳だな」
「石像なのに古墳か」
「近畿の古墳か」
「この辺りの豪族が近畿の古墳を真似たのか」
「石像を作ると共に」
「ということは」
「九州、それも最南部の豪族までもが朝廷と交流があったということだな」
暢樹は確かな声で言った。
「そういうことか」
「その辺りはこれからの研究ですが」
「このことは大きいですね」
「これは凄い発見ですよ」
「それも相当に」
「俺が動いた通りだったな」
まただった、暢樹は会心の笑みで言った。
「よかった、じゃあこのことを詳しく調査してな」
「それで学会に発表しま
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