第四章
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「あの世界の者達は巨人だが」
「他の巨人とは違う」
「炎の身体を持つ得体の知れない者達だ」
こう言ってだ、彼等に得体の知れない恐怖を感じてだ。
睫毛は彼等への壁としたのだ、備えも怠らなかった。
それからだ、骨の中でもだった。
頭蓋骨は空に上げて天空とした、そこを僕達に支えさせてだ。頭蓋骨の中にあった脳髄は一旦ばらばらにしてだった。
その空に散らして雲とした、そこまでしてだった。
ヴィリとヴァーは二人でだ、こう言った。
「これで終わったな」
「そうだな」
「世界は出来た」
「完全にな」
「いや、まだだ」
だがその彼等にだ、オーディンはこう言った。
「まだやることがある」
「まだあるのか」
「もうユミルの身体は全て使ったが」
「確かに使ったが」
ユミルの身体は全てだとだ、オーディンもそのことは認めた。
だが彼は弟達にこうも言ったのだった。
「残った腐った部分に蛆が湧いた」
「蛆か」
「その蛆を使うのか」
「蛆達を人の形にしてだ」
そしてというのだ。
「もう一つの種族を創ろう」
「そうするのか」
「人間達とは別に」
「人間達と似た形にして知恵も与える」
人間の様にというのだ。
「そうしよう、これからな」
「ではだ」
「彼等も創るのだな」
「これからな」
オーディンは実際に蛆達の形を人に近いものにしてそこに知性も与えた、そして彼等をドヴェルグと名付けた。そこまで終えてだった。
彼は弟達にだ、満足している声で言った。
「これで全てだ」
「世界は創造された」
「そうなったな」
「ユミルは死にだ」
他ならぬ彼等が殺してだ。
「世界は我々が創造した」
「そうだな、ではだ」
「これから世界を治めよう」
「我等が創った世界をな」
「今から」
「ユミルは大きなものをもたらしてくれた」
オーディンはそのユミルであった世界の中で言った。
「我々の治めるべき世界をな」
「全くだ、殺してよかった」
「我等が世界の主となりだ」
「世界が創造された」
「そうなったのだからな」
「これ以上はないまでの存在だ」
満足している言葉だった、兄弟達のそれは。そこには何の咎めるものも感じていなかった。
北欧神話においてはユミルから世界は創造されたとある、それは最初の神々による世界の祖の殺害からはじまる。そこに悪を見るかどうかは人による、しかし世界はそこからはじまった。この神話においてこのことは紛れもない事実である。ユミルは巨人だとも神だとも言われている、ならばユミルは世界創造の犠牲になった神となる。次の神々が世界の主となり治める為の。
生贄になった神 完
2016・4・22
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