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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十話 共同宣言
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めた、そういうことではありませんか、十月十五日の勅令以来同盟の中でも帝国との共存を考え始める人達が居ると聞きますが」

「どういう形であれ、宇宙が平和になる事は良い事だと考えています」
私がそう答えるとまたフラッシュが激しくなった。おそらく帝国と自由惑星同盟が外交関係を改善しようとしている、そう考えたのだろう。

そう考えてもおかしくない。帝国政府が自由惑星同盟政府を対等の交渉相手として扱っているのだ。これまでなら有り得ない事だった。捕虜交換、そして宇宙が平和になる事は良い事、その言葉を聞けば帝国と同盟が和平への道を模索しているように見えるだろう。しかし、宇宙が平和になるのは和平だけがその手段ではない、統一でも宇宙は平和になる。


その後は適当に質問を切り上げ、会場を後にした。ヘンスローとともに弁務官室に戻る。これからこの物覚えの悪い犬に引導を渡さなければならん。

「ヘンスロー弁務官、御苦労だったな」
「ああ、私はこれで戻らせて頂く」
「そうだな、ハイネセンへ戻られると良いだろう」
「つまらない冗談は止めてくれ、不愉快だ」

ムッとした様に不機嫌そうなヘンスローを見ていると哀れみより、馬鹿馬鹿しさが胸に溢れた。ヘンスローはおそらくフェザーンの用意した女、酒でも楽しもうと言うのだろう。何も分かっていない、お前抜きで此処まで事を運んだという事がどういう事か……。

「冗談ではない、卿には本国への帰還命令が出ている」
「……」
「トリューニヒト議長は卿から直接今回の交渉の紆余曲折を聞きたいそうだ」

「ば、馬鹿な。私は交渉など何もしていない」
「未だ分からんか、そういう口実で帰国しろと言っているのだ。既に船も同盟政府が用意している。宇宙港へ行くのだな」
「ちょっと待て、私は」

見苦しく慌てふためくヘンスローを見ていると溜息が出た。お前は同盟政府からも帝国からもまるで信用されていないのだ。そして今ではフェザーンからも相手にされないに違いない。

「トリューニヒト議長に感謝するのだな。ルビンスキーの期待を裏切った卿がフェザーンに居る事がどれだけ危険か。卿も分からぬではあるまい。命の有るうちにハイネセンに戻ることだ」

「そ、そんな、わ、私は」
「連れて行け」
私の言葉に職員が見苦しく騒ぐヘンスローを連れて行った。さて、嫌な仕事が終わった。気分を入れ替えてもう一仕事しなければならん。


帝国暦 487年11月26日   フェザーン  アドリアン・ルビンスキー


捕虜交換か……、やってくれるではないか。これで同盟が帝国に侵攻する可能性は全くなくなった。同盟の力を利用して反乱を長引かせるという目論みは潰えた。記者会見をするヘンスローとレムシャイド伯爵を見ながら俺は思った。

「ヘンスロー
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