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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十九話 ウルリッヒ・ケスラーの肖像
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ね」
「そうです、ケスラー提督。しかし時間がかかりますね」

「いや、そうでもないでしょう。陛下のお傍近くにいて近衛とも接触のある人物、そして惑星トラウンシュタインの密猟を揉み消せる人物ともなれば、宮内尚書、次官、局長クラスです。一人ずつ潰していけば良い」

「……」
「キスリング准将、最優先だ、宮内省の顔の見えない男を特定してくれ」
「はっ」



ケスラーとキスリングが帰った後、俺は応接室で一人残っていた。正直なところ書類整理をする気にはなれなかった。全く今日は碌でもない一日だ。ひとつ狂うと全てが狂うか……。同感だよ、ヤン・ウェンリー。おそらく俺の方がその想いは強いだろうけどね。

ルビンスキー、オーベルシュタイン、ラング、そして宮内省の顔の見えない男……。宮内省の男は分からないが、どいつもこいつも他人を陥れる事だけに生きる喜びを感じているような連中だ。まるで魑魅魍魎、百鬼夜行とでもいうべき連中で間違ってもお友達にはなりたいと思う人間じゃない。

俺も謀略は使う。しかし謀略に淫してはいない。謀略そのものが生きがいなどという事は無い。これから先、魑魅魍魎、百鬼夜行な奴らを相手に生き死にを賭けて陰謀ごっこをするのかと思うと気が滅入ってくる。俺の生き残る可能性は低いんじゃないだろうか。

まあ、それでもこっちにはケスラーが居る、それがせめてもの救いだな。ケスラーまで敵に回っていた日には俺はあっという間に首と胴が永遠の別れ、なんて事になりかねない。もっとも一瞬の別れでも終わりだが。

ウルリッヒ・ケスラー、俺が思うに原作では最強の謀将と言って良いだろう。ルビンスキー、オーベルシュタイン、ラング、トリューニヒト、全てが斃れる中で最後まで生き残った。

ケスラーが謀略家として動き始めるのはエルウィン・ヨーゼフの誘拐後だ。あの時、ケスラーの部下だったモルトはラインハルトとオーベルシュタインに殺されたと言って良い。ケスラーももう少しで切り捨てられる所だった。ケスラー自身その事には気付いていただろう。

普通ならケスラーはラインハルトにもオーベルシュタインにも反感を反発を示してもおかしくはなかった。だがケスラーはそれを内に隠して一切表に出さなかった。もし反感を表していたらあっという間に更迭されていただろう。

そして有能な憲兵総監、帝都防衛司令官として存在し続けた。おそらくオーベルシュタインにも仕事上での協力は惜しまなかったはずだ。そうやってオーベルシュタインの猜疑心を自分から他者に向けさせた。

そしてロイエンタールの反逆事件が起きる。あの事件で最大の利益を得たのはオーベルシュタインではない、ケスラーだ。一見すると、危険視していたロイエンタールを葬ったオーベルシュタインが勝利者のように見える。

だが良く考えてみ
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