第一章
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カラカ
ヨルダンはアラブの中にある国の一つだ、この国についてだ。
橋本邦臣はそのヨルダンから来た留学生のマサム=ハシクに彼が通っている大学の喫茶店で一緒にコーヒーを飲みつつこう返した。
「落ち着いているよな」
「あの中ではね」
マサムは邦臣にすぐに答えた、彼の大柄な身体と黒々とした髪の毛に色黒の肌と鋭い目を持つ引き締まった顔を見ながら。
「そうだよ」
「そうだよな」
「うん、けれど君はヨルダンのことは」
「ああ、よく知らない」
邦臣はマサムに素直に答えた、彼もマサムを見ている。一八〇ある彼と同じ位の背に赤い肌と彫のある顔にある強い目の光と黒いオールバックの髪を見つつ。身体は痩せている。
「悪いけれど」
「いやいや、悪くないよ」
マサムはそれは否定した。
「知らないことはね」
「そうなんだ」
「知らないなら知ればいいから」
「それだけなんだ」
「そうだよ、じゃあカラカも知らないね」
「カラカ?」
「ヨルダンの民族衣装だよ」
それがカラカだというのだ。
「それも知らないね」
「アラブの服は」
ここでこんなことを言った邦臣だった。
「男の人は頭に白い布を被って女の人は」
「ヴェールだね」
「それじゃないの?」
「いやいや、確かにヴェールはイスラムの伝統衣装だけれど」
「それだけじゃないんだ」
「そうだよ、このカラカも女の人の服だけれど」
それでもというのだ。
「別に顔を隠さないよ」
「そうなんだ」
「カラカはね」
「イスラムの衣装といっても色々なんだね」
「それでね」
「カラカは顔を隠さない」
「そうなんだ」
こう邦臣に話した。
「その服はね」
「成程、どんな服か見てみたくなったけれど」
「じゃあ見たい?」
「そうだね」
一呼吸置いてからだ、邦臣はマサムに返した。
「それじゃあね」
「よし、じゃあ僕は夏は祖国に戻るから」
「僕もというのかい?」
「来てみる?ヨルダンに」
「いや、僕は専門は日本の考古学でね」
「専門じゃないし」
「お金もないよ」
こうマサムに答えた。
「だから気持ちだけ受け取っておくよ」
「じゃあお金を出すと言えば?」
「お金?」
「僕の学費も生活費も気前よく軽く出してくれている親戚がいてね」
「軽くなんだ」
「そう、軽くね。石油王でね」
アラブといえばという人物だ、とはいってもアラブ人全てがこうした人ではない。流石にそうした社会は存在しない。
「学問のことならお金を出してくれるから」
「それでなんだ」
「君がヨルダンに行きたいならね」
「旅費はなんだ」
「あっちにいる間はお金は一切いらないよ」
「一切だね」
「一人位のそうしたお金はね」
それこそというの
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