第二十六話 退所その三
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「説明書もありますし」
「その説明書を見ながらやるのね」
「そうしていきます」
「わかったわ、それじゃあね」
「自分で接続します」
「失敗してもいいのよ」
優しい声でだ、副所長は優花にこうも言った。
「そうして覚えればいいから」
「失敗してもですか」
「それで接続に時間がかかってもね」
「覚えるからですか」
「人は経験で覚えるものでしょ」
「はい、何でもそうですね」
「だから失敗もいいの」
これは接続だけでなく人生でのこと全体もとだ、副所長は言葉の中にそうしたものも含めて優花に対して話した。
「そうしてもね」
「失敗を恐れないことですね」
「恥と思わない、人の命もかかっていないから
「人の命は、ですか」
「それがかかっているならね」
医師の目での言葉だった、今度は。
「失敗は出来ないわ」
「それは、ですね」
「そう、けれどね」
「こうしたことはいいんですね」
「そうよ、いいのよ」
是非にというのだ。
「接続に失敗しても」
「失敗してまたやって」
「覚えてね」
「絵で失敗するのと同じですね」
美術、長年親しんでいるこれのことからだ、優花は言った。
「それと」
「一回失敗するといいというわね」
「先生に言われました」
「そうよね、失敗して」
「だから先生は失敗して怒らないと言ってました」
「八条学園の先生かしら」
「中等部でも高等部でもそうでした」
どちらの部活の顧問の先生もというのだ。
「描くのが遅くでも失敗してもいいって」
「そうしたことから覚えるから」
「遅いのは人それぞれで」
「失敗もなのね」
「覚えるからって」
「そこからなのね」
「そう言われましたから」
だからだとだ、優花は副所長に部活で教えてもらったことを話した。
「それは怖がるな、って怖がることは」
「それは何かしら」
「失敗を認めないことだって言われました」
「そのことを怖がれって言われたのね」
「はい、中学でも高校でも」
部活においてというのだ。
「どの先生も失敗は怒らないから自分で認めろって」
「失敗を認めてそれを次に生かせっていうのね」
「そう言われました」
「いいことね、体育会で悪い人だとね」
副所長は巷に、特に教師でいる輩の話をした。何故か先輩よりも教師の方にそうした輩が多いから日本の教育は崩壊したのであろう。
「失敗して殴ったり罵ったりする人がいるわね」
「暴力を振るう人ですね」
「失敗したからね」
「そうした人がいるから失敗を認めない人がいるんですね」
「認めたら殴られるから」
即ち暴力を振るわれるからだ。
「そうした人は認めていなかろうがそうしてくるけれど」
「それはよくないですね」
「暴力は教育でも躾でも何でもないわ」
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