暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百十六話
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
合わなかったらしい――と思いながら、近くに見えてきたボス部屋の扉を臨むと。

「……え?」

 彼女の槍を持った腕が、中ほどから切断されていた。

「ぁ――!?」

 驚く暇もなく、次いでセブンが見たものは、いくつもそちらに投げつけられた煙幕。洞窟内のダンジョンはあっという間に煙が充満し、視界を完全に白く染め上げていた。パニックになってしまい動けないセブンに、周囲から沢山の声が聞こえてきた。

「敵だ! PKだ!」

「誰か風魔法使える奴は!」

「魔法が、つかえな――ッ!」

「馬鹿! こっちは味方だ!」

 そして声とともに響き渡ったのは、斬撃の音とメンバーの悲鳴の音。辛うじてプレイヤーキラーの襲撃だというのは分かったが、煙幕に覆われて何も見ることは出来ない。プレイヤーキラーたちも同じ条件の筈だが、それを感じさせないほどシャムロックのメンバーたちの悲鳴のみが響き渡る。

「ぁ……わたし……」

「セブン! 向こうに! 逃げて!」

 パニックになったセブンは、その場でキョロキョロと辺りを見渡していると、ついさっきまで目前で話していた、槍使いの女性プレイヤーの姿が見えた。健在だった仲間の姿を確認し、反射的にそちらに向かって行ってしまうが――セブンは、その一瞬の後に気づく。

 彼女は、向こうに逃げろと言っていた、と。

「ぁ――!」

 駆け寄った彼女の胸部に鋭利なナイフが突き刺さるとともに、その身は赤いエンドフレイムとなってこの世界から消えていく。セブンは自らの身体を急に止めることが出来ずに、そのまま彼女のエンドフレイムに駆け寄ると、すぐに何かにぶつかってしまう。

「…………」

 いや、何か、などではなく分かっていた。それは彼女を刺し殺したプレイヤーキラー――その悪魔のような笑みは、セブンをまるで虫のように見下ろしており、その手には赤銅色に輝くナイフが握られていた。白いフードにすっぽりと身を包んでおり、これで煙幕に身を潜めていた――などと分析する頭は残っているにもかかわらず、セブンのアバターはまるで金縛りでもあったかのように動けなかった。

 そしてプレイヤーキラーがセブンという一番の大物を逃すわけもなく、先にあの女性プレイヤーを刺し殺した、ナイフという暴力の塊が次の標的にセブンを選ぶ。セブンも自身の得物たる長槍でもって応戦しようとするも、キャリアに動き、スキルや射程、そのいずれにせよ足りなかった。

「このっ……あっ!」

 下級ソードスキルを伴った槍の一撃はあっけなく避けられ、フードを目深に被ったプレイヤーキラーがさらに肉迫すると、そのままセブンの腹を蹴り上げた。

「が、ぁ――」

 初めて経験する、迫る殺意の塊に――セブンは無意識に身をすくませていた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ