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SAO−銀ノ月−
第百十六話
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 七色・アルシャービンの最初の記憶は、父と母が怒鳴りあっていた記憶。確かその時は、七色が父の持っていた専門書を読んでみせて、それがどれだけ異常なことなのかも分からない時のこと。最初は七色は天才だと、家族に褒められていただけだったが、まずは徐々に父が変わっていった。

 幼かった七色はただ、両親やお姉ちゃんに『偉いね!』って言われたかっただけだったが、それが両親の喧嘩の原因になるとは想像も出来ない年齢だった。この子は天才だから、海外できちんと学ばせて大成させる、と意気込む父。普通の女の子として育たせてあげたい、と反対する母。二人の意見は平行線で怒鳴りあいにまで発展し、別室にいる七色の耳にもその声は届いていた。

 そして自分のせいで両親がケンカしているんだ、と泣き喚く七色を、姉は一晩中慰めていてくれた。多分それが、七色・アルシャービンという人物の原点だった。科学者としての『七色』からすれば非科学的な噴飯ものだったが、こればかりは目をつぶれば、今でもその時の感触は思い浮かべることが出来る。

 大丈夫、大丈夫だから――って。


「スメラギさん、大丈夫かな……」

 近くにいたシャムロックの女性プレイヤーの声に、七色は昔の追憶から意識を取り戻す。このALOというゲームを使った一大実験において、さらに名前を上げてお姉ちゃんを見つけ出す――その目的のために、七色は迷宮区をひた走っているのだから。

「スメラギなら大丈夫! あいつってば妙に強いんだから!」

「……ありがと、セブン」

 このALOに来て七色に出来た友人たち――ユウキたちを足止めするため、スメラギたちを含めたシャムロックのメンバーは、迷宮区の入口で彼らと戦っている。一般プレイヤーにも、割と彼らの反則じみた強さは伝わっているらしく、彼女の心配もそこからなのだろう。

 そして自分と迷宮区をひた走っているのは、今回のボスに特化した構成のグループ。お姉ちゃんに会いたい、という自分だけの目的に利用している、という事実がセブンにとっては非常申し訳なかったが――アイドルとしての『セブン』のファンである彼ら彼女らは、こうして共に遊べてかつ役に立てるならそれでいい、と。

 そんなメンバーたちに報いるためにも、絶対に実験を成功させてお姉ちゃんに会わなくては――と、セブンは決意を新たにして槍を握る力を強くする。すると、先程スメラギを心配していた女性プレイヤーが、再びこちらに振り向いていた。

「そろそろですね。スメラギさんたちに勝利の報告、届けましょう!」

 フロアボスが待つボス部屋までもう近いらしく、彼女もやる気充分といったように、自慢の片手槍を構えていた。ふと気になって、もう一度後ろを向いてみたが、ユウキたちが追ってくる様子も気配もない。

 彼女たちは間に
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