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先恋
先恋〜温かさ〜
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周りみたいに馬鹿にせず、まっすぐな瞳で見てくれた。他なんか気にしない、まっすぐな瞳でーーーー。

(お、お礼言わなきゃだよね!)
沙奈はそう考えながら、あの生徒の姿を捜した。
(名前が分かれば良いんだけど…分かんないな…うーん…)
周りを見渡すと、ある男子生徒がこちらを見ていた。その生徒は、沙奈を見てフッと笑い、
「お願いしましゅっ」
と言った。沙奈は両眼見開き、
「な…っ!何で…っ」
「え?何でって、あんな事しといて笑わない方がおかしいって、ほんっと面白かったよ」
沙奈は顔から火が出るほど恥ずかしかった。その生徒の発言で、周りの生徒も笑いながら此方を見ている、と、側にいた男性教師が、
「緊張するんだから仕方ないでしょーが、面白かったのはわかるけど、あんま言わないようにしてあげてよ可哀想だから…」
此処の学校の男はみんな、デリカシーがないのか…と、沙奈は思った。此処にきて早々、こんな目に会うなんて思ってもいなかった。
「…………」
沙奈が黙って職員室に入ろうとした時、
「あのさ」
誰かの声がした。沙奈が振り向く…と、
「そうゆう事、平気で言えるとか…俺らの学年っていつからそんなクソになったの?」
沙奈は分かった。この子はあの時の…
「先生は、生徒がこんな目に遭ってても…可哀想だから、としか言ってくれないんですね、僕、瑞木先生はすごく辛いと思いますよ」
沙奈がその生徒を見つめる。すると、その生徒は振り返り、
「すみません、先生、僕たちの学年はみんな、空気が読めないんです、本当に、すみませんでした。」
沙奈は「ありがとう」と、その生徒の強さに驚きつつ、返事を返した。
「いえ、僕たちの学年がグチャグチャなだけで、先生は何も悪くないです。こうゆう所があるから、僕らの学年は成長しないんですよね、本当に…」
その生徒はそう言い、優しく微笑んだ。
「あ、そうでした、失礼しました。僕、二年A組、春先 陸太、と言います。宜しくお願いしますね、瑞木先生、」
沙奈はその生徒に微笑み、
「ありがとう、春先君、」
「いえ、気にしないで下さい。僕も将来、教師になりたいから、こうやって人の事を考えられない奴にはちゃんと注意したいと思ってるんですよ」
何て良い子だろう、沙奈は思った。気が付けば、周りの教師も生徒も、動きを止めていた。
「僕、誰か先生を見本として、教師とはどんな仕事かを知りたかったんですが、今ので良く分かりました。瑞木先生以外に、それに完璧に値する人は居ない様ですね、人を悪くなんて言わない先生を見習いたいと思います。」
陸太はそう言い、また、微笑んだ。沙奈は、先程まであり得ない程に冷えていた心が温まったのを感じた。
「では、また」
「うん、ありがとう、春先君」
陸太は沙奈に一礼し、そのままその場を離れた。沙奈
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