第四章
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「くじけていないわ」
「その強さは立派ね」
「まあね、まあ家に帰ったら」
その時はとだ、また言った千佳だった。
「お兄ちゃん観察するから」
「観察なのね」
「そうよ、今日は巨人との勝負だけれど」
「甲子園でね」
「さて、どうなるか」
「そろそろ勝ってくれないと」
祐奈の声もかなり切実である、ファンとして。
「困るけれどね」
「甲子園で一勝も出来ないままだと」
「それは困るでしょ」
「悲しくて悔しくて情けなくて涙が出るわ」
「お兄ちゃんはその百倍だから」
「さて、今日はどうなるか」
「家で見てくるわ」
その兄をとだ、千佳は祐奈に言った。彼女は実際に家に帰ってから兄を見た。兄の寿は学校から帰ると千佳にまずはこう言った。
「今日はインディペンデンスディになるからな」
「独立記念日とか?」
「阪神の夜が終わる日になるんだよ」
こう力説するのだった、妹に対して。
「いよいよな」
「甲子園で巨人に勝つっていうのね」
「そうだ、今年はまああれなんだよ」
寿は何処か必死の口調で言った。
「オープン戦だったんだ」
「今年一年使った」
「若手を育成するな」
「そうだったのね」
「来年の為の布石だったんだ」
迷いはないが必死の目で言葉を出していく。
「だから来年はな」
「阪神優勝っていうのね」
「そのはじまりになるのが今日なんだ」
「そういうことなのね」
「見ていろ、今日はな」
それこそというのだ。
「阪神が勝つからな」
「けれど今日は甲子園行かないのね」
「まずは家で勉強だ」
成績優秀な寿らしい返事だった、中等部の進学コースでも成績優秀で高等部の進学コースも間違いないと言われている。
「そうしてな」
「勉強しながら試合を聴いて」
「終わったその時がな」
「そのイン何とかディね」
「インディペンデスディだ」
こう妹に言ってだ、寿は自分の部屋に入った。母はその息子を見ながらやれやれといった顔でこんなことを言った。
「どうしてうちの子達はこうなのかしら」
「野球が好きだっていうのね」
「そうよ、阪神に広島にって」
「だって私の血はカープレッドだから」
「あの子も阪神液が流れてるって言ってるわ」
それもいつもだ。
「全く、どうかしてるわ」
「どうかしてるって」
「二人共ね」
まさにというのだ。
「やれやれよ」
「私もおかしいみたいに言うわね」
「だってあんたもカープファンだし」
「生きがいよ」
「それでお兄ちゃんもだから」
「やれやれっていうのね」
「お父さんもお母さんもあんた達程じゃないわよ」
熱狂的な野球ファンではないというのだ。
「とてもね」
「好きだから仕方ないじゃない」
「そう言うけれど呆れるわ」
自分の子供達で
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