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天国と地獄
第二章

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「叩きのめしてね」
「シリーズに出て」
「パリーグのどのチームが出て来ても」
 実は千佳はパリーグはあまり知らない、リーグが違うのであまり興味はないのだ。この辺りかなりカープに偏っている。
「勝ってやるわ」
「応援はするわね」
「有り難う、とにかくね」
「今凄く機嫌がいいのね」
「何か春が来たって感じよ」
 優勝が決まったのは秋であるがだ。
「長い長い冬が終わってね」
「ずっとBクラスで」
「地味だの存在感がないだの言われてきて」
 広島限定のチームだった、これまでは。
「それがよ」
「優勝ね」
「こんないいことはないわ」
 まさにというのだ。
「本当にね」
「もう天国にいるみたいね」
「そうね、何ていうか」
「嬉しくて嬉しくて」
「仕方がないわ」
 言葉にも如実に出ていた、勿論表情にも
「いや、起きてから寝るまでずっと最高の気分よ」
「成程ね、ただね」
 ここでだ、祐奈は千佳にあえて別の質問をした。その質問はというと。
「お兄さんどうなの?」
「わかるでしょ」
「ああ、やっぱり」
「もう荒れて荒れてね」
「仕方ないのね」
「毎日夜はダッシュで十キロは走ってるわ」
 そうしているというのだ。
「負ける度に家を飛び出てね」
「怒りのあまりなのね」
「勝っても喜びで九割の力で八キロだけれど。試合なくても勝利祈願とか言って走って」
「そっちも凄いわね」
「甲子園に行っても」
 熱狂的なファンだから当然として行っているんおだ。
「怒って帰ってきてよ」
「ダッシュなのね」
「その日々よ」
「ダッシュで十キロね」
「お陰でストレス解消されてトレーニングにもなって」
「スキー部のエースのままなのね」
「すっきりして勉強もしてるし」
 それでというのだ。
「そっちの方は絶好調なのよ」
「それはいいことね」
「そのこと自体はね」
 ここで言葉に釘を入れた千佳だった。
「いいけれど」
「家族としては?」
「呆れるしかないわ」
 それこそというのだ。
「もうね」
「大変ね」
「今年の阪神はね」
 千佳は広島ファンとしてこのチームのことを話した。
「壮絶だから」
「私も阪神ファンだけれど」
 実はとだ、祐奈も言う。その大きな目に太い眉のある顔を微妙にさせて。
「今年はね」
「兄貴さん監督になったけれど」
「何かね」
「ドツボね」
「そう、ドツボだから」
 それでとだ、千佳に話した。
「もうね」
「どうしようもないわね」
「それでお兄さんもなのね」
「開幕してちょっとまでは絶好調だったの」
 それまではというのだ。
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