第二十五話 外の世界へその十一
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「あまりはっきりじゃないです」
「別れたから」
「はい、お父さんとも」
自分からこのことも言った優花だった。
「だからお母さんのことも」
「そうだったわね」
「けれどそれでもなんですね」
優花が副所長を気遣って言った。
「女の人はおばさんになってもですか」
「ええ、そう言われる年齢になってもね」
「魅力があるんですね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「これがね」
「そうなんですね」
「三十代になっても三十代の魅力があって」
優花にさらに話していく。
「四十代になればね」
「四十代の魅力があるんですね」
「そうなのよ」
「それが女の人ですか」
「男の人もそうよ、主人もね」
自分の夫を例えに出した。
「若い時は若い時の魅力があったし」
「今は今の魅力がですね」
「あるから」
「だからですか」
「おばさんと言われるのもね」
余裕のある大人の笑顔で言う言葉だ。
「いいわ」
「そうですか」
「そう、私はね」
「そうなんですね」
「三十になっても四十になっても」
それでもというのだ。
「その年齢に合わせての奇麗さがあってね」
「それを経験していくこともですか」
「お母さんにいいって言われたのよ」
「そうですか」
「だから蓮見さんもね」
「年齢を重ねていくべきですね」
「ずっとね、あとね」
副所長はこうも言った。
「人生はどん底はあるけれど頂点はないのよ」
「それはどういうことですか?」
「今が一番幸せだって思う時があるでしょ」
「はい、ありますね」
優花も心当たりがあることだ、身体が変わっていくようになってからは幸せを感じるだけの余裕もなかったが。
「それは」
「そうね、そうした時は誰でもあるわね」
「けれど一番幸せはですか」
「ないのよ、地球の一番下には核があるけれど」
灼熱のマグマであると言われている。
「お空の先には宇宙があるわね」
「そして宇宙はですね」
「宇宙は何処までもあるわね」
「だから幸せは、ですか」
「そう、果てがないのよ」
「そうなんですね」
「地獄の一番下には魔王がいてそれで終わりだけれど」
ダンテの神曲によるとだ、三つの顔を持つ巨大な魔王がユダやブルートスといった当時で最大の悪人とされていた者達を咥えている。
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