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真田十勇士
巻ノ五十八 付け城その七
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「そしてじゃ」
「流言を流し」
「そして、ですか」
「城を守る者達の士気も落とし」
「そのうえで」
「降らせる、そして降ればな」
 その時のこともだ、幸村は言った。
「誰の命も奪わぬ」
「城主の方のお命も」
「誰も」
「戦はしても無用な血はいらぬ」
 これも幸村の考えだ、彼は決してそうしたことは求めないのだ。
「だからな」
「はい、では」
「これより徹底的に流言飛語を流します」
「そして城を開城させましょう」
「そこに持っていきましょう」
 十勇士達も応える、そしてだった。
 幸村は彼等にだ、こうも言った。
「城に入ってもな」
「殺生もですな」
「無闇にはですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「戦はしてもじゃ」
「無駄な血を流すことはない」
「殿がいつも言われていることですな」
「だからじゃ、御主達も命は大事にせよ」 
 例えそれが敵のものであってもというのだ。
「戦って敵を倒すことはよいが」
「悪戯に命を奪う」
「それはせずに」
「殿の言われるまま」
「攻めよというのですな」
「そうじゃ、よいな」
 こう十勇士達に言う、そして実際にだった。
 幸村は囲んでいる城を力押しせずにだった、城の中に十勇士達を送り込み彼が伝えた流言飛語を流し。
 城の中の敵の将兵達を惑わした、その流言飛語はというと。
「援軍は来ぬのか」
「ではこのまま我等は城で討ち死にか」
「周りの城は全て攻め落とされたという」
「しかも敵の援軍がまた来るという」
「それならもう終わりじゃ」
「戦っても意味がない」
「しかも降れた皆助けてもらえるそうじゃ」
 こうした噂をだ、十勇士達は幸村に授けられ城の中に忍び込み北条家の者達に流していたのだ。事前に捕虜から貰い受けた北条家の白の服や具足を着けたうえで。
 それを聞いてだ、北条の兵達も口々に彼等の中で話をした。
「助かるのならな」
「うむ、無理に戦うこともない」
「どうせ援軍も来ぬし周りも囲まれておる」
「ここは降った方がよいぞ」
「全くじゃ」
 城の兵の士気は瞬く間に落ちてだ、それを見てだった。
 城主もだ、城の主な者達を集めて言った。
「話は聞いておるな」
「兵達がですな」
「戦う気をなくしていますな」
「囲まれ援軍も来ぬ」
「しかも命は助けてもらえると聞いて」
「実際にじゃ」
 城主は彼の下にいる旗本達にこうも言った。
「真田殿からそうした話が来ておる」
「誰も殺すことなくですな」
「命を助けると」
「その様に」
「上杉殿にお話して関白様にとりなしもしてくれてじゃ」
 ただ開城して命を助けるだけでなく、というのだ。
「しかもじゃ」
「さらにですな」
「我等の領地も安堵して頂く」
「そうも言われてい
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