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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十七話 微笑、覚悟、野心……
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そんな……」
「これは私だけの考えでは有りません。エーレンベルク、シュタインホフの両元帥、リヒテンラーデ侯も同意見です。そして陛下も……」
「!」

簒奪、ローエングラム伯が簒奪。覇気の有る青年だとは思っていた。野心家だとも思っていた。しかし若いのだ、野心も覇気も有るだろう。それが簒奪……。陛下もご存知……。

「司令長官への就任を断らないでください。断れば新たな内乱が生じかねない。それは帝国にとって不幸以外の何物でもない……」
「……分かりました。どれだけお役に立てるかは分かりませんが、精一杯努めさせていただきます」

私の言葉に司令長官は“御苦労をおかけします”と言うと頭を下げた。
「閣下、御願いですから身の回りの警備を厳重にしてください。万一の場合などが起きないように」
「もちろんです。私も未だ死にたくはありません」

司令長官が普段の温顔に戻った。
「メルカッツ提督が宇宙艦隊司令長官になった時は、ケスラー提督に総参謀長をお願いすると良いでしょう。ケスラー提督なら軍事、政治の両面でメルカッツ提督を支えてくれるはずです」

司令長官の言葉にケスラー提督を見た。彼は驚いたようだったが、私と眼を合わせると“必ず御期待に応えます”と言った。

「大丈夫です。宇宙艦隊には人材が揃っています。メルカッツ提督の足手纏いになる人間や足を引っ張るような人間はいません。それに自由惑星同盟は戦力が枯渇しています。正攻法で難しい戦いをすることなく勝てるはずです。心配する事は無いでしょう」
そう言うと司令長官は微笑を浮かべた、何時ものように……。





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