暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十七話 微笑、覚悟、野心……
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
溢れた。最もさっきの様な嫌な感じではない、身の引き締まるような緊張感だ。

「今回の内乱は単純な権力闘争ではありません。これからの帝国の進路を決める戦いです。我々が勝てば帝国はルドルフ大帝の作った帝国からフリードリヒ四世陛下の作る帝国に変わります。十月十五日に発布された勅令に従い五箇条の御誓文が帝国の国是となるでしょう」
司令長官の言葉に第五十七会議室が静まりかえった。

「……」
「一部の特権階級が全てを支配し弱者を踏みにじる国家ではなく、誰もが安心して暮らせる国家、我々はそれを作るための剣に成らなければならない。新しい時代を我等の手で切り開くのです」

誰もが安心して暮らせる国家、新しい時代を我等の手で切り開く、その言葉が俺を高揚させた。その先には宇宙の統一が待っている。そうだ、俺達は新しい時代を切り開く剣になるのだ。あの時と、初めてこの部屋に来た時と同じだ。此処から全てが始まる……。自分の顔が紅潮するのが分かった。

「当初の作戦計画通り、別働隊はローエングラム伯が率いてください」
「はっ」
皆が視線を交わす。ローエングラム伯はほっとしたようだ。初めて緊張から解放されているように見えた。

「本隊はしばらくの間、メルカッツ提督に率いてもらいます」
司令長官の言葉に部屋がざわめいた。メルカッツ提督も驚いている。そしてローエングラム伯が愕然とするのが見えた。

「閣下、それは一体」
「メルカッツ提督、私は先ず自由惑星同盟とフェザーンを相手にしなければなりません。彼らを大人しくさせておかないと厄介な事になりますからね」

自由惑星同盟、フェザーン、その言葉に部屋が沈黙した。
「フェザーン方面は既にシュムーデ提督を総司令官として四個艦隊を向かわせました」

四個艦隊、司令長官の言葉にまた部屋がざわめく。
「閣下、彼らの任務は一体……」
「……主としてフェザーン方面の補給線の確保になります、まあ他にも多少有りますが……」
ローエングラム伯の質問に司令長官は少し考えてから答えた。

「メルカッツ提督」
「はっ」
「メルカッツ提督には宇宙艦隊副司令長官に就任していただくことになりました」

宇宙艦隊副司令長官! その言葉に部屋がまたざわめく。これで何度目だろう。だが直ぐに沈黙が落ちた。皆司令長官、ローエングラム伯、メルカッツ提督を交互に見ている。司令長官は穏やかに、ローエングラム伯は蒼白に、メルカッツ提督は困惑している。

沈黙の中で司令長官の声だけが流れた。
「明日には辞令が発令されるでしょう。メルカッツ提督、心臓には悪いかもしれませんが、私を助けてください」
「……」

「メルカッツ提督、私には提督の助けが必要なんです」
何処か哀しさを感じさせる口調だった。覚悟を決めたのだろう、力強く
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ