六十二話 百鬼夜荒 伍
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囲に浮遊していた鉄輪が再び高速回転を始め、空気を切り裂き猛牛の嘶きの様な音が空間を満たす。
まるでそれは諏訪子の怒りを具現化しているかの様に。
「泣いて許しを請えば、今なら楽に殺してあげるよ?」
諏訪子の言葉に覇夜斗は口端を吊り上げる。
謝罪をした所で結果は同じ――――彼女の言葉は結局、死刑宣告なのだ。
質の悪い冗談と何ら代わらない。
「…ふ…フハハ……ハハハハッ!!
――――ほざくな売女ッ!!」
覇夜斗は叫ぶと同時に諏訪子に向け槍を構え突撃し、対して諏訪子は鉄輪を投げ放ち迎え撃った。
月詠の読みが正しければ覇夜斗が消せるモノは『能力で発生したモノ』だけの筈。
神力で物質化した神鉄ならばその範疇外だと、諏訪子は判断したのだ。
実際に覇夜斗は先程放たれた鉄輪を消さずに打ち落としている。
しかし――――
彼が手を翳すと同時に鉄輪は霞の如くその姿を消した。
月詠の勘は半分は的を得ている。
覇夜斗の能力の名は『奇跡を還す程度の能力』。
能力に限らず、力で起こした現象そのものを力に還元するものである。
故に氣の物質化すら能力の範疇なのだ。
「甘いのですよッ!!」
覇夜斗は頭上で槍を回転させ、勢いをつけ諏訪子の脳天目掛け振り下ろす。
空気を裂く音すら置き去りにする程の切り落としが諏訪子に迫るが――――
突如、噴水の如く吹き出した土石流が抵抗を赦さず覇夜斗を飲み込み天上へと翔け上がって行く。
更に土石流は螺旋運度を始め、その様はまるで海上で発生した竜巻の様だった。
だが数瞬後、その土石竜巻も霞の如く消え空中には覇夜斗だけが残る。
しかしその身は土石流の猛威に曝され彼方此方に裂傷が刻まれており、軽くはない流血を起こしていた。
「甘い、って言った?じゃぁ最も辛口にしてあげるよ」
諏訪子は帽子の渕を押し上げ、上空に居る覇夜斗に笑顔を浮かべながら、先程の挑発への意趣返しの様にそう言った。
その言葉に覇夜斗は顔を引き攣らせながらも怒りを抑え、冷静を装う様に負けじと笑顔を浮かべてみせる。
「……侮っていた…つもりは無かったのですが…
いえ、やはり何処かで侮っていたのかもしれませんね。
ならば此処からは全身全霊、本気で掛からせて頂きます。
洩矢様、御覚悟を!」
覇夜斗は笑みを消すと槍を構えを機を覗うかの様に静止し、それに答える様に諏訪子が頭上に手を翳すと大地が振動し彼女の足元が突然勢い良く隆起する。
そして土が崩れた後に諏訪子の足元に現れたのは、大理石で造られたかの様な巨大な猪であった。
更に周囲には八つ
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