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東方虚空伝
六十二話 百鬼夜荒 伍
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は、

「全く……憎らしいほどに優秀な方々ですね!このまま私に喰い付いてくださればいいと言うのにッ!!
 しかし主要な将は前線に出払っているのは確認済みです!貴女(月詠)が戻り、指揮を取れなければ結局の所我等の勝利ですよッ!」

 覇夜斗の言葉通り、大和の将は大方出払っている。
 熊襲軍へ迎撃に出た神奈子は率いる本隊とは別に、幾人かの将は伊勢の都に待機していたが、京の都が妖怪の集団に襲撃されたとの報を受けその対応と第二波の警戒の為に将と部隊を割かねばならなかった。

「妖怪共の京の都襲撃も貴様等の策謀だなッ!」

「私は貴女方(大和)の陽動を要請しただけですがねッ!」

 槍を挟んで言葉と視線をぶつけ合う月詠と覇夜斗。

「神々の戦に民を巻き込むなどッ!恥を知れ下郎ッ!!」

「いやはや耳が痛いッ!……ですが我が主のッ!熊襲の勝利の為ならば全ての罪過を背負う覚悟ッ!
 気に入らないのでしたら、力で押し通しては如何かッ!!」

「言われるまでもないわッ!!」

 月詠の叫びと同時に、覇夜斗の()()()()()()()()(覇夜斗)の脳天目掛け手刀を振り下ろす。
 背後にだけでなく()()()()月詠が現れ攻撃体勢に入っている。
 覇夜斗の正面には槍を?んだままの月詠が居るというのに、合計で四人の月詠が存在していた。

 月は新月から満月に至るまでに三十の顔を見せる。
 月詠の能力は月の在り方を顕現するもの――――その一つが実体を持った分身(幻影)である。
 最大で三十体まで生み出せる分身であり、能力が使えないのと数に比例して本体と比べ弱体化する以外は月詠本人と変わりなく会話も思考もする。

 覇夜斗は槍を手放し背後からの一撃を相手の懐に滑り込む様にし左右からの挟撃も合わせて躱し月詠達から距離を取る。
 手刀をが掠め少しばかり裁断された覇夜斗の髪が宙に舞う中、月詠達は間合いを離そうとする覇夜斗に一斉に躍り掛かるが――――

 覇夜斗が手を翳すと同時に月詠の分身体は、先の月と同じ様に霞の如く消え失せる。

(此奴ッ!やはりッ!)

 月詠は心の中でそう吐き捨てる。
 再び起こった不可解な現象だが、月詠は相手(覇夜斗)の能力に大体の当たりが付いていた。

 覇夜斗は再び槍を創り出すと一気に間合いを詰め月詠へと突連?を放つ。
 鋭く撓り蛇の様に襲い掛かる槍?を、月詠は的確にいなし避け槍に掌?を打ち込み弾くと同時に後方へと飛び距離を取った。

 月詠の右頬には紅い線が奔っており、涙の様に血が一筋滴り落ちる。
 彼女(月詠)はその雫を指で払いながら、覇夜斗へと鋭い眼光を浴びせた。

「……能力を
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