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東方虚空伝
六十二話 百鬼夜荒 伍
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襲軍》からは全貌が見えない為、岩だと思っているが大和の軍勢からは()()が何であるのかは確りと確認出来る。
 それは夜天から降りて来たのでは?と錯覚する程の岩肌の球体――――月。
 本物に比べれば遙かに小さいのであろうが、百mを優に超えていれば十分に巨大である。


『月を表す程度の能力』

 月詠が持つ能力で、その効能は正に名の通りだ。

 月は見る者に安らぎを感じさせる――――其れ即ち“癒し”である。
 月は照らし出した者の心を乱す――――其れ即ち“眩惑”である。
 月は刻と共に姿を変える――――其れ即ち“変幻”である。
 そして月は夜天の君臨者である。

 太陽とは違い月は個人により多種多様に顔を変えるのだ。
 月詠はそんな多様な月の在り方を発現させる事が出来、覇夜斗の頭上に月を疑似顕現させたのだ。

 本物ではないがその質量は実体であり、押し潰されれば如何なる存在も圧殺されるだろう。
 逃げる猶予など与えない奇襲であり月詠は必殺を確信していた。

 寸前まで迫っている月から逃れる猶予は確かに無かった、しかし――――

 地上に降ちる筈だった夜天の王は、まるで霞の様にその姿を消した。

「なッ!」

 月詠は目の前で起こった現象に驚愕し声を上げる。
 そしてこの不可解な現象を引き起こした張本人だと思われる人物へと視線を向けた。

 その人物――覇夜斗は右手を頭上へと掲げた格好のまま月詠へと笑み見せる、がその額には冷や汗が流れ月詠の一手が脅威だった事実を覗わせる。

「……さ…流石は大和の月詠様……今のは肝を冷やしましたよ!
 しかし二度の轍は踏みませんッ!さぁデュラハン達!行きなさいッ!!」

 覇夜斗の(げん)を受け、佇んでいたデュラハン達が弾かれた様に駆け出し大和の軍勢の方向へと進撃を開始した。

 其れを見て月詠を始め大和の軍は迎撃の構えを取るが――――デュラハン達はまるで彼等を避けるかの様に迂回しそのまま駆け抜けて行く。

 その行動に呆気に取られた大和の神々に月詠の一喝が飛ぶ。

「追えッ!奴等の狙いは()()()()だッ!!」

「その通りですよッ!!」

「ッ!?」

 声に反応し覇夜斗へ視線を戻した月詠の目に飛び込んで来たのは、(覇夜斗)の手に握られ今正に自分へと迫る二股の槍。
 月詠は覇夜斗の叫びと共に放たれて来た槍の一撃を捌き、柄を?む事で防いだ。

「月詠様ッ!!」

「構うなッ行けッ!一体たりとも都に侵入させるなッ!!」

 月詠は自分の援護に戻ろうとする者達に更に追撃命令を下し、配下の者達は一瞬だけ躊躇を見せるが直ぐさま転身しデュラハン達を追って行く。
 そんな彼等を見て覇夜斗
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