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Once upon a dream〜はじまらないはじまりのものがたり〜
10月9日(木)
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け出してきたような姿。重い色の学ランが少しミスマッチかな?彼に一番似合うのは白銀の衣装に違いない。沢山の女の子に囲まれて楽しそうに話している王子様。その距離はだいぶ…近いな。外国育ちなのかな。と、見ている間にも女の子の頬に王子が優しくキスをして、ぎぃやあーーーっ!と悲鳴が上がる。ああ、中庭なんて目立つところであんなことするから…。



「はぁ〜カッコイイ…」



 友美は頬杖をついてぽやんとした顔をしている。



「確かに日本の婦女子ドストライクみたいな顔してるね。でもチャラいよ。付き合っても無いのにキスとかしてるし。女の子いっぱい侍らせてるし」



「いいの!あれは鑑賞用!間違ったって王子のお手つきになれるなんて考えても居ないから、みんなの王子であってくれさえすればいいの。はぁ〜ん王子ィ〜?」



「と、友美?友美?」



 よくわからないことを呟く友美をぺしぺしと叩いてみたが、彼女は夢の世界の住人になって頭の中にお花畑を咲かせているようで、全く現実世界に戻ってきてくれない。



 王子、恐るべし。



 けれど、この王子チラ見事件があったおかげで、わたしの目覚めの不愉快さもどこかに行ってしまったみたいだったので、まぁ、良しとしよう。



 そもそも、夢の話だ。気にする方がバカみたいである。



 わたしはお風呂上がりに髪を乾かしながら、そう結論づけると、満足してベッドに寝転がり瞳を閉じた。今度は変な夢を見ませんように…と祈りながら。



 しかし、わたしの願いは神に通じなかったらしい。



 三度目ともなれば最早お馴染みになったピンクの線で縁取られた視界に、わたしはため息をついた。日付は、10月15日(水)となっている。視界の向こうは学校だ。突如、ドンッと視界が揺れる。



『あ…ごめんねキミ…大丈夫?』



 下に、「アレクサンドル:『あ…ごめんねキミ…大丈夫?』」と出た。あ、アレクサンドルぅ?そんなキラキラネームの人果たしてこの田舎の学校に居ただろうか。居たら相当な噂になっている筈だけれど…。漢字は亜玲苦参$とかだろうか。かわいそうに…暴走族のような当て字をしながらもかなり無理矢理つけられた西洋風の名前のせいで、のっぺりした純日本人顔の子供が、学校という出る杭は打たれる世界でどう扱われるか、名付けの際に親はちらとでも考えたりはしないのだろうか。しないんだろうな。そんな客観的な視点があれば、そもそもそんな名前をつけようと思わないに違いない。



 そんな同情心が沸いたが、一瞬でどこかへ消え去った。衣擦れの音と共に、視界いっぱいに今日中庭で遠くから見かけた「王子」の顔がドアップで現れたからだ。わたしは思わず
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