第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「私は現場に行く」
「はい、では留守はお任せ下さい」
痩せた男の人、副知事さんも知事さんに確かな声で応えました。
「その間何かあればです」
「頼めるね」
「知事は救助に向かって下さい」
「こうした時はいてもたってもいられないからね」
知事さんは確かなお顔で言うのでした。
「僕としては」
「県で困っている市民の人がいれば」
「動ける状況ならね」
行かないと気が済まないというのです。
「それが僕の性分だから」
「そうした人だからですよ」
「我々も頑張れます」
「ではすぐに行きましょう」
「家族の救助に」
「そうしよう」
知事さんはヘルメットを被ってでした、そうして。
自ら先頭に立って救助に向かいました、現場に行く途中で最悪の情報が入りました。
「決壊!?」
「はい、遂にです」
「堤防が決壊しました」
「家族の家の方の堤防がです」
「これは大変です」
「まずいぞ」
知事さんはお役人の人達と一緒にヘリで現場に向かっていますがそこで言いました。
「これは」
「急ぎましょう」
「自衛隊の人達にも応援を依頼しています」
「すぐに向かいましょう」
「是非」
「急がないと大変なことになる」
そのお顔を蒼白にさせて言う知事さんでした。
「ご家族が危ないぞ」
「はい、ヘリの速度を上げましょう」
「最大速度で行きましょう」
「急ぐんだ、ことは一刻を争う」
知事さんは実際にこう判断しました、そして。
そのうえで、です。現場に向かうとでした。
ご家族が住んでいた地域は濁流に飲み込まれていてです、車は流され家も古い家は徐々に濁流に飲まれようとしています。電柱は倒れ木も沈んでいっています。
その中の赤い屋根の一軒家を指差してです、お役人の人達は言いました。
「あそこです」
「あのお家です」
「あそこがそのご一家のお家ですが」
「ですが」
「確かお父さんが一人で娘さんが一人だったね」
知事さんはお役人さん達に尋ねました、そのお家を見ながら。
「そうだったね」
「はい、そうです」
「あのお家です」
「窓のところにいるね」
見れば二階の窓のところにです、角刈りで痩せた初老の男の人とです。まだ小学生の娘さんが一緒にいますが。
濁流は今にもでした、お家を飲み込もうとしています。
その様子を見てです、知事さんは言いました。
「急ぐんだ、さもないと」
「はい、ですが」
「我々のヘリも自衛隊のヘリもです」
「間に合うかどうか」
「濁流の勢いが強過ぎて」
「果たして」
「間に合うかどうかじゃないんだ」
知事さんはお役人さん達に強い声で言いました。
「間に合わせるんだ」
「そうしてですね」
「そのうえで、ですね」
「急いでそして」
「その
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ