第五十二話 VRMMOの本当の姿
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けど、全部じゃない。 あの世界で起きた事を忘れないため、もしくはまた何かがあった時のために残しておいたんです。 まぁ、半分はあのアバターを無くすのは惜しいって言う気持ちからですけど。」
リーファ「ね、踊ろうよ。」
コジロウ「え?」
私はコジロウ君の右手を取り、雲海を滑るようにスライドする。
ホバリングしながらゆっくり移動する。
コジロウ「こ、こうですか?」
リーファ「うん、そう。 上手い上手い。」
私は腰のポケットから小さな瓶を取り出した。
栓を抜き空中に浮かせると、瓶の中から銀色の粒子が流れ出し、澄んだ音楽を奏でた。
プーカの吟遊詩人が、自分の演奏を詰めて売っているアイテムだ。
音楽に合わせ、私たちはステップを踏み始めた。
大きく、小さく、また大きくと、空を舞う。
蒼く月光に照らされた無限の雲海を、私たちは音楽に合わせて滑る。
最初は緩やかだった動きを徐々に速く、一度のステップでより遠くまで。
私たちの翅が撒き散らす、緑色の燐光と青い燐光が重なり、空にぶつかって消えていく。
これが最後になるかもしれない、そう思った。
お兄ちゃん、佑真君、龍也先輩、彼らの世界がある。
学校、仲間、そして大切な人。
手を伸ばしても届かない世界がある。
その背中に近づきたくて、妖精の翅を手に入れてみたけど、お兄ちゃん達、今日パーティー会場に居たみんなの心の半分は、今でも幻の城にある。
私には決して訪れることが出来ない、夢幻の世界。
閉じた瞼から、一筋の涙が流れた。
コジロウ「リーファ?」
耳元でコジロウ君の声がした。
私は微笑みながら、コジロウ君の顔を見た。
同時に小瓶から溢れだしていた音楽が薄れ、フェードアウトし、瓶が微かな音と共に砕け、消滅した。
私はコジロウ君の手を離し、言った。
リーファ「私、今日は、これで帰るね。」
コジロウ「なんでですか?」
涙が溢れた。
リーファ「だって、遠すぎるよ。 お兄ちゃん達が、みんなが居る所。 私じゃそこまで、行けないよ。」
コジロウ「スグさん、それは違います。 行こうと思えば、何処だって行けるんですよ。」
コジロウ君が、私の手を握ってから翅を鳴らし、加速を始めた。
繋いだ手を緩めず加速した。
世界樹は近づくに連れ、天を覆うほどの大きさになった。
幹が幾つもの枝に分かれている中心に、無数の光の群れがあった。
イグドラシル・シティの灯だ。
その中央を、私たちは一際大きく翔けて行く。
その時、幾重にも連なった鐘の音が響いた。
アルヴヘイムの零時を知らせる鐘だ。
私の手を握っていてくれていたコジロウ君が制動をかける。
私は驚きの声
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