第二十五話 外の世界へその五
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「けれどね」
「この学校に通って」
「何かあったら私のところに来るといいよ」
「校長先生の、ですか」
「実は君の様な子を知っていてね」
「そうなんですか」
「若い頃に一度。旅行に行ってね」
その時にというのだ。
「そうした子と会ったんだ」
「そうだったんですね」
「そして君のこともわかるつもりだから」
それでというのだ。
「何かあったら私に話して欲しい」
「そうしていいんですね」
「この学校で君のことを知っているのは私だけだよ」
「他にはですか」
「そう、誰も知らないから」
「私のことを」
「君のことはそうそう表に出来ないから」
校長もこのことをわかっていて言う。
「だからね」
「何かあれば」
「君のことは担任の先生にも学年主任の先生にも言っていない」
どちらの先生にもというのだ。
「二人確かな人物だけれどね」
「それでもですね」
「念には念を押してね」
話が漏れない様にというのだ。
「そうするから」
「校長先生は口が固い人でね」
しかもとだ、副所長も優花に話した。
「お酒も飲まないから」
「お酒も飲まないからですね」
「お酒を飲むとどうしても口が軽くなったりするわね」
「確かに」
優花も心当たりがあることだった、酒を飲むと気が大きくなりどうしても口が滑ってしまう。そうしたことは彼女にもあるのだ。
「そうしたことはあります」
「そうでしょ、だからね」
「そうした心配もないからですか」
「信頼出来る人よ」
「私は下戸でね」
校長は人生の経験を感じさせる笑顔で言った。
「それこそ一滴も飲めないんだよ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
「お酒のことも含めてね」
副所長も言う。
「信頼してね」
「わかりました、それじゃあ」
「何はともあれ」
校長は再び優花に話す。
「このことは学園の中で私と君だけの秘密だよ」
「二人だけの」
「そう、だから安心して何かあれば」
「校長先生にですね」
「話して欲しい、いいね」
「わかりました」
確かな声でだ、優花は校長に答えた。
「そうさせてもらいます」
「そういうことでね」
「学園の中をもっと見てみる?」
副所長は優花にここでこう聞いた。
「そうしてみる?」
「はい、それじゃあ。けれど」
「私服だからっていうのね」
「はい、そのことは」
「制服はもう用意してあるわ」
微笑んでだ、優花に答えた。
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