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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十九話 月夜の黒羽
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黒鐘さん」

「な、なんだ?」

 突然名前で呼ばれて驚いた様子の黒鐘さんの目を見て、

「私のこと、すずかって呼んでください」

 私は私の名前をあげた。

 私のお父さんとお母さんがくれた、化物とか吸血鬼とか夜の一族じゃない、私の大切な名前。

 今の私があげられる大切なもの。

「……え?」

「ですから、私のこと、名前で呼んでください」

「……えと、い、いいのか?」

「私がお願いしてるんです」

「……」

 戸惑う彼の表情はどこか可愛くて、愛おしくて。

 この感情がなんなのか、私は少しずつ理解していった。

 ああ、私はきっと、

「それじゃ……すずか」

「はい、黒鐘さん!」

「ぐおっ!? く、首、締めすぎ……」

 私はきっと――――この人のことが、好きなんだ。


*****


「……出るタイミングを失った」

 コンテナの外に出てアタシ、逢沢 柚那は溜息を漏らした。

 黒鐘先輩のところに行こうとしたけど、月村さんとの間にあった空気には入れなかった。

 聞き耳を立てるのも悪いと思って、誰が来るかもしれないとか色々言い訳を作って外で待つことにした。

 真っ暗な空に、波の音と風の音が交じり合う。

 それはアタシの全身の熱をゆっくりと奪っていき、心を落ち着かせる。

 指で数えられる回数の実戦をした。

 それは緊張と不安だけが全身を支配する、落ち着かない時間だった。

 失敗したら黒鐘先輩も死んでしまうって言う責任感は辛いものがあったのに、彼は……黒鐘先輩は慣れてる様子で淡々と行動していた。

 不安がないわけでも、緊張がないわけじゃない。

 ただただやるべきことをこなしていた。

 それがアタシにとってはどれほど凄いことか、きっと彼自身には分からないのだろう。

「やっぱり凄いな……お兄ちゃん」

 素直な心で素直な感想が零れる。

 やっぱりアタシが憧れたあの人は、アタシに理想としての姿を見せてくれた。

 アタシはそれに負けじとリーダー格以外の人を気絶させた。

 お兄ちゃんもリーダー格の人を撃ってたけど、デバイスの放つ銃弾はスタン設定だから、軽い脳震盪を起こしてるだけだろう。

 あとは警察の人に全部任せて私達は退散すればいい。

 ……それだけなのに、それだけをするのに凄く体力を使った気がする。

 特に心の体力を使った気がする。

「まだまだなんだな……アタシ」

 分かってたことだけど、やっぱり悔しい。

 お兄ちゃんの背後を狙ってみたけど、簡単に見破られた。

 実戦に挑戦してみたら、凄く緊張した。

 アタシはまだまだ未熟で、彼の背
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