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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十九話 月夜の黒羽
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血鬼なんですよ?」

「血って美味しいの?」

「飲んだことありません」

「それは吸血鬼的にダメじゃない?」

「私は吸血鬼の血が薄いですから、欲しいと思ったことがないんです」

「なら問題ないじゃん」

「でも普通じゃないんです」

「どの辺が?」

「私、どんなケガをしてもすぐ治るんです」

「女の子はケガ少ない方がいいよね。 治りが早いなら尚の事いいじゃん」

「身体能力が普通じゃないんです」

「オリンピック選手目指せば? ほら、金メダル取り放題だ」

「感覚が鋭いんですよ?」

「かくれんぼしたら最強の鬼じゃん」

「人じゃないんですよ!!」

「どの辺が?」

「だから!!!」

 気づけば私は声を張り上げて、叫ぶように喋っていた。

 彼は最初から変わらない、落ち着いた口調なのに、私はどうしてか怒ってるみたいに声を上げた。

 こんなに叫んだこと、今まであったかな?

「私の全部が、人じゃないんですよっ!!!」

「……ホントにそうか?」

「え……?」

 そんな私に彼は反論するでもなく、お世辞の言葉をかけるでもなく、ただ頷いた。

 何も質問せず、本当にただただ頷いた。

 予想外の反応にあっけを取られていると、彼は私の視線と同じ高さまで膝を曲げて、真っ直ぐにこちらを見つめてきた。

 突然のことに驚く私。

 そんな私に彼は、ゆっくりと笑みを見せた。

「寂しかったよな。 今まで、よく一人で我慢できたな……偉いよ」

「あ……」

 そう言って彼は右手を私の頭の上に乗せて、撫で始めた。

 優しく、優しく、慈しむように。

 私は泣いた。

 気づいたら泣いていた。

 溢れてくる、悲しみ、寂しさ、羨ましさ。

 助けて欲しいって思った。

 化物としていきなきゃいけない、孤独な運命から、助け出して欲しいって思った。

「……まぁでも、化物でもいいんじゃない?」

「え……」

 だけど彼は、否定をしなかった。

 だけど彼は、笑顔を絶やさなかった。

 私を真っ直ぐに見つめて、優しい声音で話してくれた。

「化物だったら友達を作っちゃいけないのか? 化物だったら喋っちゃいけないのか? 化物だったら一人にならなきゃいけないのか? ――――違うだろ?」

 彼は笑顔だけど、笑ってるんじゃなくて真剣な表情で話す。

 まるで自分も、その辛さを知ってるみたいに。

「化物だって幸せを求めていんだよ。 化物だって友達を作っていいし、恋をしたっていいし、楽しんでいいんだよ」

「なんで……そんなこと、言えるんですか?」

 化物でもないアナタが、どうして?


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