109話 満身創痍
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姿だった。
私は全身の激痛を、その瞬間は忘れた。
ねぇ、怒りの先には何があるんだろう。悲しみの爆発のその先には?悲鳴すら出ない、そんな時は?
私は、レオパルドに斬りかかっていた。
過程は、わからない。あれだけの傷を負っていたから動けたわけがない、とどこかで諦めた私が心の中で呟いたぐらいだ。でも、私は跳んでいた。跳べていた。斬りかかっていた。
翼を生やし、いつぞやのドルマゲスに似た姿になったレオパルドが躍り出た私を見て嗤う。嫌な笑いだった。
――自分から来るとは好都合だ。
私の剣は、見えない力で弾かれる。それに逆らって指がもげ取れそうになっても、私は剣を離さない。ならば次と斬りかかる。ブチブチと肉が耐えきれずにちぎれる音が聞こえるようだ。骨がミシミシ悲鳴をあげる。銀色に染まった髪は、レオパルドの瞳の中では光っているみたいだった。
ずぶり。
視界が、妙にクリアだ。そして、なんでだろう、動けない。
「……ぁ」
なんでだろう、すごく、痛いなぁ。エルトの叫び声が聞こえるのはなんで?何かが引き抜かれて、……何が?
口からごぶり、血を吐く。痛い。痛いよ、どこが痛いかも分からない。
痛いだけだ。視界が今度は暗くなる。メディさんの、仇を討たないと……。殺さないと、こいつを。
「てめぇッ!」
赤い人影が、崩れ落ちる私を支える。飛び去っていくレオパルドに向かって人影が思い切り十字を切った。眩い光が、一直線に向かう。神々しい光景に痛みの中でも素直に感動できた。
眩しいなぁ。ククール、いつそんなすごい魔法、覚えたの……。
・・・・
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