暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
15話 柩の魔女
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ないが、それでも縋る相手を違えていると判るが、少女の耳には届かないだろう。故に、侮蔑の意思を込めた視線をピニオラに向ける。


「それで、終いには次の獲物にでもするつもりか?」


 やや棘のある声であったが、この女がこの程度では怯むまい。
 不思議そうに首を傾げたと思ったら、柔らかい笑みを浮かべた後に首を横に振る。


「この子はわたしのお友達ですから、そんなことしませんってば〜。それに物語の主人公に据えるのはですねぇ、誰かと縁を持つ方だけですよ〜。その後に巻き起こる感情の連鎖までが、わたしの作品に欠かせない大切な要素ですからねぇ」


 まるで、その少女はピニオラに拾われるまで独りで居たかのような口振りだった。
 人の死を観て楽しむような人間に、誰かに手を差し伸べるような善性があるとは思えないし、思いたくもないが、事実としてピニオラは少女を保護している。その上、PKのターゲットにはしないとまで言っている。
 ずっと前、初対面の際にピニオラの《創作活動》における意気込みは当人から聞かされている。
 あれほど熱の籠った弁舌を宣うからには、それなりの矜持が無くては為し得ないだろう。だからこそ、ターゲットを偽るような真似はないと思いたいところだ。


「それはそうと、わたしもリンさんに聞きたい事があるんですよぉ。お互い仲良くなるためにぃ、お聞かせ願えませんか〜?」
「………情報開示の為の交換条件か?」
「いえいえ〜、もっとカンタンな理由ですってばぁ。………例えば、()()()()()なんて言い方が一番しっくりくるかもですけど〜、ダメですかぁ?」


 これから向けられる質問は、交渉上の意味は全くない。
 ピニオラの言を信じるならば、これは《笑う棺桶》に関わる問いではないと暗に示すものだろうか。


「とにかく、先ずは内容を聞いてからだ。それから決める」
「そんなに難しいお顔しなくたって平気ですよぉ。お聞きしたいのは、去年の十一月のお話ですぅ」


 末尾に告げられた《時期》に、眉根に皺が寄る。
 

「その月のある日にぃ、一人の女性プレイヤーさんが死んじゃってるんですけどぉ………あ、お名前は確か、グリセルダさんでしたっけ〜?」
「………随分と回りくどい質問だな」
「あらぁ、意外と淡泊なんですねぇ」


 しかし、俺はもうその事件について怯える理由などない。
 有益な情報と引き換えに使えるならば、この局面においては手札として使っても構いはしない。


「そのグリセルダという女性は、俺の親友だった。確かにお前の言う通り、昨年の十一月にレッドプレイヤーの襲撃に遭い、命を落としている。だが、それがどうした?」
「これまたアッサリですねぇ〜。なんだか、お
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