暁 〜小説投稿サイト〜
STARDUST唐eLAMEHAZE
STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「前編」
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
儀礼的に言った少女の、膝を支える力が唐突に抜ける。
 普段の日常でもよく転ぶ事が多い少女、
ましてや今まで見た事もない不思議な植物に
触れた後なら必然の成り行きと言えた。
 そのまま前のめりに蹌踉めきながら、少女の躰は男の背に折り重なる。
「ご、ごめんなさい」  
 軽く躓いた程度だったので衝突というものでもなかったが、
少女は男の背に躰を預けたまま謝罪の言葉を口にした。
 だが、その刹那。



 ズギュンッッ!!



 全身を劈く異様な体感と共に、彼女の躰は男の背を 『突き抜けた』
(――え!?)
 何か、異常に密度の濃い、実体を伴った雲か煙の間を掻き分けたような、そんな感覚。
 鞄を両手に抱えたまま、支えを失った少女の脚は大きく体勢を崩し蹈鞴を踏む。
 一体何が起こったのかも解らぬまま、振り向いた少女の瞳に映った、モノ。
「――ッッ!!」
 余りの惨状に、叫び声も出なかった。
 突き抜けた男の躯は無残に千切れて四散し、
壊れたマネキン人形のように四肢が床の上に散らばっていた。
(な……な……な……に……!? コ……レ……? 『現実』……なの……!?)
 許容不可能な驚愕に、瞳の焦点が曖昧になる少女。
 そこ、に。
「あぁ〜、イヤ、すまない。驚かせたかな?」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
 バラバラになった状態でこちらを振り向いた男に、少女は今度こそ悲鳴をあげた。 
「まぁ、驚くなというのが無理な話かな?
咄嗟の事だったので私も対応出来なくてね。
こっちから 「生命」 に触れるのはいいが、“触れられるのは” 『魂』 がヤバイんだ」
 そう言うと半身の男は千切れた腕で残りの胴体部と脚部を手繰り寄せ、
それぞれの損壊部を元の断面へと押し当てた。
 一瞬というわけではなかったが、まるで人体切断魔術(マジック)のように
男の躯は元通りに繋がり、何事もなかったように再び動き出す。
「あ……あ……あぁ……」
 更なる怪異の綴れ折りにより、少女の両膝はガクガクと震えながら床につき
その胡桃色の双眸にも涙が滲んだ。
「……」
 その様子を認めた男は無言で立ち上がり、自省するように帽子の鍔で目元を覆った。
 千切れた箇所は別段何の変化もなく、疵痕や出血は疎かスーツに解れ一つ付いていない。
「あ……ぁ……あなた……は……あなた……は……?」
 得体の知れない恐怖に完全に腰が抜けてしまった為、
最早立つ事も後退る事も出来なくなった少女はただ必死で疑問を投げかけた。
 きっと何かのトリックだ、からかわれているだけなんだ。
 何度も何度もそう思い込もうとした、が、
先刻躰に絡みついた感覚がソレを赦さなかった。
 瞳に灼き付いた光景は、己の安
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ