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STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「前編」
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黄昏の風が揺らした。
 視界の前を通り過ぎる、たくさんの人々、同じ学園の生徒もいる。
 しかし歩道に開けたその 『道』 を曲がる者は誰もいない。
 向こう側には幾つも住宅が見えるし、樹木の生い茂る庭もある。
歩道と車道を分けるガードレールだってあるのに。
 なのに誰もその存在に気づかず、まるで自分にしか視えていないように
傍らを通り過ぎている。
「……ッ!」
 寒気にも似た感覚が少女の身を震わせた。
 突如意識のエアポケットに現れた、異様な場所。
 しかしその 『道』 は閉鎖された密室の中から覗く美しい田園風景のように、
抗い難い 「引力」 を発している。
『此処ではない何処かへ』 そっと誘うように、招き寄せるように。
 だがまた同時に、 『行っては行けない』 という憂慮も強く迫り上がってきた。
 自分のいま在る日常が、平穏が、いとも容易く崩れてしまうような、漠然とした危機感。
 馬鹿げた考えだと想ったが、躰を走る感覚は否定出来なかった。
 正と負の狭間で、激しく揺れる少女の心。
「……」
 結局、好奇心というより 「常識」 が勝った。
 先刻心中で渦巻く想いを、危うい妄想と片付けたのも決断に拍車を掛けた。
(どうせ帰ってもする事ないし、ちょっと行ってみよう) 
 夕食の話題のタネには丁度いいかもしれないし、
それに知らない小道に行くのって、ちょっとワクワクする。
 もしかしたら誰も知らない小さな公園なり、綺麗な庭なり、
瀟洒な建物なり発見出来るかもしれない。
 良くも悪くも 「常人」 である少女の裡に生まれた、他愛の無い遊び心。
 その前に 『本来存在しない筈の道』 という事実は黙殺された。 
 そしてそれこそが、 『運命』 の曲がり角。
 夕焼けに照らされる異界への境界線を少女は、吉田 一美は、
何の 「覚悟」 もなく平然と踏み越えた。 









【2】


 当たり前だが、特に何の変わり映えもない 『道』
 ニュータウンの区画ではないので外壁の広い一軒家が目立つが、
周囲は閑散としていて人の気はない。
 突き当たりのT字路、妙に年季の入った郵便ポストの前で一度背後を振り返ったが、
自分以外にこの 『道』 へ来る者はいないようだ。
 左右を見回し、学園の方へ戻るのもバカらしかったので左に進む。
 米森、本間、小野寺、沼倉、他に見るものも無かったので少女は
通り過ぎる家の表札を一瞥しながら歩いた。
(なんか、空き家が多いな)
 通り過ぎる家はどれも立派な一戸建てだったが、
長らく放置された影響で窓ガラスが一様にくすんでおり、
最近開け閉めした形跡もない。 
 長らくの不況の煽りは例外なく自分の街にも降り注いだが
それにしてもゴーストタウ
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