二十話:食べログ
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中からあずきバーを選び受け取る。
『ジャンヌ・オルタ、あずきバーは気をつけてね』
「はあ? 何を気をつけるっていうのよ。ただのアイスでしょ」
何をバカなことを言っているのだと呆れた目を向けながら袋を開け取り出す。
しかし、あずきバーはただのアイスではない。
『―――侮るな。奴は時として人間に牙を剥くぞ』
「は? なに馬鹿なこと言ってるのよ。そんなこと起こるわけないわよ」
『昔は君のような挑戦者だったのだが、歯を折られてしまってな……』
「なによ、それ! 本当にアイスなわけ!?」
あずきバーは歯の弱い人間では到底太刀打ちできる存在ではない。
夏の暑さに紛れながら彼らは幾人もの歯をその誇りと共に打ち砕いてきた。
人類の英知が生み出した究極の一。英雄王の蔵にも入っていると言われる代物だ。
『アイスの身でありながらサファイアの硬度を超えた存在……それがあずきバー』
「ふ、ふん。あんたが折れても私がそんなバカなことになるわけないでしょ!」
『後、水飴でも歯が取れるから良い子のみんなは気を付けてね』
「あんた歯取れすぎでしょ……」
震え声になりながらも意地を張って平気なフリをするジャンヌ・オルタ。
ここで少し融かしてしまうのは自分が恐れていると思われる。
そう考えたジャンヌ・オルタは恐怖を振り切り、勢いよくあずきバーにかじりつく。
「硬ッ!?」
『大丈夫、おっぱい揉む?』
「セクハラ発言してんじゃないわよ! というかあんた男でしょうが!」
「お姉様にならいつでも喜んで!」
「あんたは黙っときなさい!」
想像していた以上の硬さに涙を滲ませながら叫ぶジャンヌ・オルタ。
そして便乗して悪乗りするぐだ男にブリュンヒルデ。
アイスの一本で場は混沌へと導かれてしまったのだ。
あずきバー融かすべし、慈悲はない。
『それで歯は大丈夫なの?』
「フン、大丈夫に決まってるでしょ。あんたと一緒にしないでちょうだい」
ぐだ男を見下しながらあずきバーを融かすためにチロチロと舐めるジャンヌ・オルタ。
そんな小動物的な仕草にぐだ男とブリュンヒルデは温かい視線を向けるが肝心の本人は融かすのに一生懸命で気づかない。
『いいよね、ジャンヌ・オルタ』
「はい……」
「…? 何よ、あんた達。変な目をして?」
怪訝そうな顔をする彼女に首を振り二人して笑う。
ますます、顔をしかめるジャンヌ・オルタであったがすぐに無視をして目の前にアイスに意識を戻すのだった。
『それで、ブログは書けそうなの?』
「ええ。過去に類のないレベルで扱き下ろしてやるわ。あんなの人間の食べ物じゃないわ。あれを好んで食べる人間なんて外道よ、外道」
麻婆の味を思い出して顔をしかめ
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