第二十四話 世界の外その十一
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「陰湿だから」
「そんなに酷いんですね」
「そうよ、陰湿で卑怯なのよ」
副所長は知的に整ったその顔を歪めさせてだ、優花に話した。
「男の子でもそうした人はいるけれどね」
「もっとですか」
「そうしたものなのよ」
陰湿て卑怯だというのだ。
「見ていていいものじゃないわ」
「副所長さんも」
「見たわ、加わらなかったけれど」
いじめ、それにはというのだ。
「何も出来なかったわ」
「そうですか」
「手を差し伸べることも、考えもしなかったわ」
「けれど今はですか」
「後悔しているわ、その後悔はね」
「嫌な後悔ですね」
「後悔はどれも嫌なものだけれどね」
その中でもというのだ。
「特にね」
「そうした後悔は、ですね」
「すべきじゃないわ」
絶対にという言葉だった。
「何があってもね」
「止めるべきですか」
「逃げるべきではないわ」
そうしたこととは、というのだ。
「出来ればね」
「そうですか」
「ええ、私は今でも苦い思いをしているわ」
その後悔に対してというのだ。
「だから貴女はね」
「いじめを見たらですね」
「見ているだけ、逃げることはね」
「しないことですね」
「前に向かって嫌な思いをしても」
自分がいじめられる様になったりしてだ、人間の醜い一面は時として人をそうした状況に追いやってしまう。行為がかえって。
「けれどね」
「後で後悔するよりもですか」
「まだずっといいから」
「そうした時はですね」
「向かって欲しいの」
「いじめに対して」
「他のことにもね、そうしたら後悔しないから」
後になってだ。
「だからね」
「そうですか」
「そのことはお願いね」
穏やかだが強い口調での言葉だった。
「くれぐれも」
「怖くても後で嫌な思いをしても」
「向かってね」
前にというのだ。
「いいわね、若し何かあったら」
「その時はですか」
「ここに来てね」
そして自分をというのだ。
「頼ってね」
「そうしていいんですね」
「人は弱いものよ、一人ではどうしようもないこともあるわ」
「出来るだけ一人で物事を解決しなくてはいけなくても」
「どうしようもない時もあるわ、そうした時はね」
「ここに来て、ですか」
「私や岡島君、他の人にお話してね」
こう優花に言うのだった。
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