Side Story
少女怪盗と仮面の神父 30
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スが驚きの視線を走らせる。
アーレストは唇の両端をやんわり持ち上げ……
「あっ、ちょっと!」
彼女の脇をすり抜けて、止める間もなく河へ飛び込んだ。
「……着水直後まで、河なんか見てすらいなかったわよね? 彼……」
「……見てなかったな」
「あなた達、落下してきた影を見極められた? 落ちてきたのが人間だと、確信できた? 私は単に反射で動いちゃったんだけど……せいぜい、奴らが石や岩を使って攻撃してきたのかと思ったくらいで……」
「ハウィスに同じく」
「「「姐さんに見えないモノが、俺達に見えるワケないっす」」」
「…………。」
「…………。」
「「「…………。」」」
(ハウィス達、アーレスト神父の異常さは知らなかったんだ……)
水面に拡がる波紋をぽかんとした表情で眺めつつ。
しばらく無言で、怪物が戻るのを待っていると。
「……っぶはーっ!」
水の膜を押し破り、男性二人と、気絶しているらしい女性が現れた。
三人の顔を確認した全員が、思いがけない組み合わせに目を丸くする。
「ベルヘンス卿……マーシャル??」
「げほ! はぁ……、……ああ、リアメルティ伯爵、か」
「どうして、こんな所に……!」
剣を収めて駆け寄るハウィスに気付いた男性が、彼女の姿を確認。
次いで周りの様子を目視し、苦しげな顔を一層曇らせた。
「アーレスト様と……ミートリッテ嬢まで。やはり、間に合わなかったか。すまない。彼女を留められず妹御の救助も遅れてしまった」
「いいえ! 正規任務中に無理をお願いしたのは私達です。ベルヘンス卿に責などありません。この愚妹をお助けいただき、ありがとうございました。卿にお怪我は?」
「無い。自分より妹御のほうが大問題だ。急いで処置を。着水時には意識を失っていたおかげで水はそれほど飲んでないが、浮上に時間が掛かった分、出血が酷くなってしまった点は詫びさせてもらう」
『ベルヘンス卿』と呼ばれた男性は、肩に掛けていたマーシャルの右腕をハウィスへ預けると、急いで自身のマントを外し、比較的大きく平らな岩の上に広げて敷いた。
すぐさま、ぐったりしたマーシャルの体が、その上に横たえられる。
別れた時には傷一つ無かった彼女の手足や肩にはいくつもの線が刻まれ、ドレスも所々切り裂かれていた。
特に酷いのは左の脇腹。ミートリッテの立ち位置だと暗闇のせいで傷口ははっきり見えないが、かなり深く斬られているのだろう。
白っぽいマントが、脇腹に触れた部分から見る間に赤黒く染まっていく。
(酷い……あんな深傷を負った体で水に飛び込んだの?? アーレスト神父が助けに行かなかったら、も
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