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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十五話 伯父・甥
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葉だった。伯父上を苦しめる、私が伯父上の元に行くのは伯父上を苦しめる事になるとスクリーンに映る男は言っている。

「私は、フレーゲル男爵を処断すると決めた時のブラウンシュバイク公を見ました。あの時の公の顔を忘れる事は出来ません。公は苦しんでいたんです。今、貴方がブラウンシュバイク公の元に行けば、貴方を巻き込んでしまうと苦しむでしょう」
「……」

「貴方がフレーゲル男爵であろうとすれば死ななければならない、しかしギルベルト・ファルマーであれば死なずにすむ。お願いです、自重してください」
ヴァレンシュタインが懇願している。この男は本気で私を気遣っている。

「……何故だ、何故そこまで私と伯父上の事を気遣う。エリザベートを攫われた事の償いか? ヴァレンシュタイン」
「それも有るかもしれません。ですが私はブラウンシュバイク公が嫌いになれないんです」

嫌いになれない、そう言うとヴァレンシュタインは困ったように笑いを浮かべた。常に穏やかな表情を崩さないこの男が何処か泣き出しそうな表情で笑っている。

「私は公が傲慢で我儘で強欲な人間だと最初は思っていました。だから憎んでいました。ですが、あの日私の前で公が見せた顔は息子の不祥事を嘆き、息子を失うことを悲しむ父親の顔でしかなかった。あんな顔は見たくなかった……」
「……」

「貴方がブラウンシュバイク公の元に行けば、公はまたあの時の顔をするでしょう。御願いです、フェザーンに留まってください」
「……ヴァレンシュタイン、卿は酷い男だな」
「……そうかもしれません」

「私は幼い時に両親を失った。それ以来あの人を父親だと思って育ったのだ。あの人が好きだった、いつかあの人の役に立ちたいと思った……。だがフレーゲル男爵は死に、ギルベルト・ファルマーはフェザーンから動けない。私は一体何のために生まれてきたのか……」

スクリーンに映るヴァレンシュタインは項垂れている。この男が何故私に連絡をしてきたのかが分かった。この男は私を止めるために連絡をしてきたのだ。それがどれほど残酷な事かを知りながら、それでも私を止めるために連絡をしてきた……。

この男を責める事はできない。私自身の愚かさがこの事態を生み出したのだ。責められるべきは私自身だ。この男には何の責任も無い。

「ヴァレンシュタイン、卿の忠告に従おう。私はフェザーンを動かぬ」
「有難うございます。御胸中、御察しします」
「うむ、卿も忙しいだろう、自分の仕事に戻ってくれ」
「分かりました、では失礼します」


何も映さなくなったスクリーンを見ながら伯父上に連絡を取るべきかどうか迷った。会う事は出来ない、だが話はしておきたい。内乱が本格的になれば伯父上と話す暇はなくなるだろう。話すなら今しかない。



スクリ
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