暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
扇動始動 X 暴動胎動
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黙っていた。

その様子を見ている間、ヒスイもただハラハラしていた訳ではない。追尾してきた二匹の巨狼――――ガルムとクーに待機を命じ、いつでもゴーサインで襲い掛かれるようにしていた。

不意に、隊長の男が口を開く。

「あなたが、領主のアリシャ・ルー。……いえ、突然来たらこうなるのは予想していました。お気になさらずに」

すると、男のすぐ脇に控えていたサラマンダーが耐えられなかったように叫ぶ。

「隊長ッ!でも――――!!」

「黙れ。お前らでも逆の立場ならこうするだろう。……こちらの部下も気が立っていて、冷静な判断ができませんでした。お許しを」

「いえ。それで、お話って……」

「できれば正式に話を通したかったですが、この様子では致し方ない。この場を借りて、サラマンダー領主、モーティマーからの言葉を伝えます」

一言一句逃さんとばかりに長い耳を立てていたヒスイだったが、それゆえに聞こえてきた言葉に眉根を寄せた。

―――モーティマーやと?南の首領(ドン)が何の用け?

疑念をよそに、スルスルと小隊長の男は実体化させたロール紙を伸ばしていく。

「――――これは、サラマンダー領から貴領への正式な《抗議文》です」

「こ、抗議?何の……」

「本日未明に、中央発の交易キャラバンが襲われました。商隊は全滅。積んでいた積み荷のほとんどは奪い去られました」

―――まさか。

嫌な予感に心がざわつくが、もうサラマンダーの口は止まらない。

「復活したキャラバンの者の証言によれば、襲ったのはケットシーだけで構成された一団。そして――――」

チラリ、と小隊長の鋼のような視線がこちらに向いたのを、ヒスイは気付く。

いや、正確にはその視線はヒスイに向けられたものではない。

その後ろ。

屋根の上にて忠実に待ての命令に従う巨狼達に注がれていた。

「その中に、テイムされたフェンリル・ラウンダーを確認した、と」

「「な……」」

絶句するしかできないアリシャとヒスイ。

その二人の様子を、遥か高みから二匹の狼は静かに見下ろす。



動乱は――――始まったばかり。
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