暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
扇動始動 X 暴動胎動
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優勢になるのは目に見えていた。

だが、ただサラマンダーの小隊を殲滅しても、この場は良くても長期的に見れば禍根しか残さない。いくらシルフとの同盟の関係上、敵対しているからといって、これ以上両種族の溝を深めるのはだれも望んでいないのだ。

―――とりあえず、止めなあかん……!

見れば、一般のケットシープレイヤー達は安全圏ということもあってか無茶苦茶な攻撃をしていた。圏外に出ている前衛だって、城壁を越えればそれで安全を確保できるのだから、それはそうだろう。

だが対するサラマンダー小隊はまだ救いはある。少なくとも理性があり、対話の意思を感じられた。

「ほら皆!!やめーや!こんなことしてなんになるんや!!」

だが、止まらない。

ヒスイがいくら声を張ったところで、事態はもう、そう簡単に鎮火しない。

ギリ、とヒスイは歯を噛みしめる。

副隊長などという大層な肩書を持っていようと、自分は先導できる人間が持つ《よく通る声》などというものは持っていない。

それはひとえに、フェンリル隊が誰を中心に成り立っているのか、また一人だけに頼り切っているかを浮き彫りにさせて、ヒスイは怒りに顔を伏せた。

そして――――



パンパン



「はいはーい、そこら辺にしようネー」

その場にそぐわない、コケティッシュな黄色い声が飛んだ。

混戦も甚だしい戦場に、普通だったら吸い込まれて消え去るだろうその声は、不思議とその場にいる全員に響き渡った。

音が途切れてもいない。そう大きな声の訳でもない。

それなのにその声は、不思議と耳に残る。

そんな一声だった。

打ったような静寂が場を支配する中、群衆の中をスルスルと抜けたその少女は、あっさりと正門の外へ出てサラマンダーの小隊と相対した。

止める間も、悲鳴を上げる暇すらなかった。

通常、領主は自らの領地を出ることは滅多にない。執務が多いというのもそうだが、領主が落された場合、落とされた側に税率の操作権や領主館にある資金の一部が無条件譲渡される。これは一度やれただけでアルヴヘイムの種族間のパワーバランスを揺るがすほどで、実際サラマンダーが過去最大勢力と呼ばれたのもシルフ領主を殺めたからだ。

そして今、よりにもよって前科のあるサラマンダーの小隊(しかも精鋭)の目の前に無防備な状態で我が領主がいるという状況に、ヒスイは眩暈が起こりそうだった。

だが、後ろの部下の気持ちもいざ知らず、進み出たアリシャは静かに頭を下げる。

「こんな状況になって、ゴメンナサイ。謝って赦してもらえるとは思えないケド、良かったら、話だけでも聞きたいな」

「…………」

領主の嘆願に、小隊の長と思われるライトアーマーを身に纏った男はしばらく
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